『ガンニバル』ドラマ全体の原点に立ち返る第5話 “若き銀”恒松祐里の見事なキャスティング

『ガンニバル』“原点”に立ち返る過去編

 後藤家の連中と直接対峙した大悟(柳楽優弥)。しかしそこに突然やってきた“あの人”によって、ましろ(志水心音)はどこかへ連れ去られてしまう。来乃神神社でケガの処置を受けた大悟に恵介(笠松将)が「(ましろは)まだ生きている」と告げるなか、2人の前に宗近(田中俊介)の父で来乃神神社の宮司である正宗(橋爪功)が現れる。“あの人”のことを、「ひとりの可哀想な人間」だと形容する彼が語りはじめたのは、供花村で起きた70年前の出来事――若き日の正宗(倉悠貴)と若き日の後藤銀(恒松祐里)の物語だ。

 4月2日に配信がスタートしたディズニープラス スター オリジナルシリーズ『ガンニバル』シーズン2の第5話は、このドラマ全体の“原点”と呼べる部分へと立ち返っていく。後藤家の前当主であり、シーズン1の序盤――大悟が供花村に左遷されてすぐに遺体となって発見された後藤銀(倍賞美津子)はいかにして後藤家の当主となったのか、そして“あの人”は何者なのか。完結編の後半戦の怒涛の展開に向かう前に、供花村と後藤家の歴史に触れる、極めて重要なエピソードであるといえよう。

 舞台は1949年の供花村へと遡る。その当時の後藤家の当主は、銀の兄である金次(豊原功補)。原作では金次の父が病床に伏しながらも存命で、実権を握っている金次が自由気ままに暴れ回っていたのだが、その父が亡き後に当主となった金次が同じように傍若無人に振る舞うことで、“後藤家”それ自体の邪悪さを強調するねらいがあるのかもしれない。供花村の村人たちは食糧難で苦しめられており、後藤家からの支配に辟易としている。そこで村人と後藤家との軋轢を取り持とうとするのが、正宗の父である吉宗(テイ龍進)。彼に連れられて後藤家を訪れた正宗は、そこで銀と出会う。

 後藤家の血を引いておらず、後藤家のなかでも、そして村人たちからも虐げられた存在である銀と、後藤家からも村人からも一目置かれる神山家の跡取りである正宗。供花村という小さな村のなかでも正反対の立場に位置する両者の関わり合いは、魔性の女にまんまと取り込まれていく純朴な青年という実にシンプルな構図である。来乃神神社を継ぐ者だけが知る秘密の場所で逢瀬を重ねていく2人。あっさりと銀の手中に嵌ってしまう正宗は、彼女のために村を変えることを誓うのである。

 先述の通りシーズン1の序盤で命を落としている銀。その後は回想シーンや写真でのみ登場してきた彼女だが、これまでのエピソードで見受けられる後藤家の面々の妄信的な血族への執着の背景には、常に彼女の存在が見え隠れしつづけてきた。“不在”でもなお絶大な影響力を持つのは、彼女が後藤家の当主だったからではなく、今回描かれた70年前のエピソードでも示されるように、他者を軽々と飲みこむだけの魔力が備わっていたからに違いない(それを類まれなるオーラで演じる恒松祐里。実に見事なキャスティングといえよう)。

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