広瀬すずは“希望”の象徴だった 『クジャクのダンス』の“陰”を成立させた“光”

父・春生(リリー・フランキー)が殺された理由とその背景にある事件の真実を追い求めていた心麦(広瀬すず)が、薄暗い森の中でついに父と再会し、抱擁を交わして最終回を迎えた『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)。2人が血の繋がりを超えた温かく優しい親子の愛を確かめ合うと、森がまばゆい光に包まれていった。このシーンのように、本作においてずっと希望の光であり続けたのが主演の広瀬すずだ。
この数カ月間のうちに心麦が経験したことを挙げていくと、心が折れてしまいそうなことばかりだった。クリスマスイブに父が何者かに殺害され、自宅も燃やされてしまったことだけでもショッキングだが、さらに2人の行きつけだった屋台の主人から、「捕まった犯人は冤罪です」という旨の父からの手紙を渡されてしまう。そして、父が信頼できると書き記していた弁護士とともに事件を調べていくと、最愛の両親は本当の親ではなく、自分は過去に父が担当した東賀山事件の唯一の生き残りだということなど、次々と驚きの事実が判明していく。
そんな中でも「春生はどうして殺されなければならなかったのか」という1点だけをとにかく追い求めていった心麦。タイトルにもなった「クジャクのダンス、誰が見た?」という言葉はもとはインド哲学の一節で、本作においては「たとえ誰も見ていなかったとしても、犯した罪から逃げることはできない」という意味を持っており、クジャクの目は“真実を知る目”のような象徴でたびたび登場した。
そして第3話で心麦は、薄暗い森の中で“クジャクのダンス”を目撃している。幻想的でもあるこのシーンのクジャクの目と心麦を演じた広瀬の大きく透き通った目が、どこか似ていたことが印象的だった。

実際、松風(松山ケンイチ)と軽口を叩き合っている時の心麦には、ちょっと拗ねたり怒ったり、年相応な幼さが残っていた。だが、春生の事件が関連してくるとその表情が一変する。その目には、「父も掴んだ真実を知りたい」という意思の強さが生まれ、相手の内側まで見透かすような力が宿っていた。
さらに、心麦は春生のことになると行動も変わる。密かに心麦のDNA鑑定をして春生との親子関係を明らかにしようとした伯母の夏美(原日出子)に直接会って話をしにいくなど真正面から切り込みすぎ、後先を考えないものになるのだ。バディとなった松風はいつもヒヤヒヤしていたが、こうして自ら動いたからこそ、心麦は松風とともに真実に辿り着けたのだ。まさに、さまざまな木々にぶつかりながらも暗い森の中を進む光のようではないだろうか。






















