『怪獣8号』劇場総集編が克服した“アニメ版の課題” 『保科の休日』で新たな一面も堪能

テレビアニメ『怪獣8号』第1期の劇場総集編と同時上映『保科の休日』が3月28日より3週間限定で全国32劇場にて公開中。テレビアニメ放送時から大きな反響を呼んだ迫力の映像と圧巻の音楽を、臨場感あふれる劇場環境で体験できる。
『怪獣8号』は原作漫画の圧倒的な人気もあり、ファンからの支持を集める一方で、テレビアニメのテンポについては一部で厳しい意見も見られた。特に防衛隊員選別試験の最終審査後、突如現れて四ノ宮キコルを襲った怪獣9号の目的が不明瞭なまま第4話以降の物語が進行する点は、物語の方向性が見えづらく、アニメで初めて作品に触れる視聴者には冗長に感じられたようだ。
これは本作のメインヴィランである9号が即座に倒されることなく長期的な脅威として物語に関わる設定に起因していると考えられるが、1話約23分というアニメの時間的制約の中で原作のペースを維持しつつ見せ場を効果的に配置することには限界があるのも事実だ。しかしながら、怪獣討伐をテーマとするエンタメ作品において期待される「怪獣との対決と勝利」というサイクルが十分に満たされなかったことが、一部視聴者の「テンポが悪い」という評価につながったと推察される。

その点、今回の劇場総集編では、一部シーンの省略がむしろ効果的に機能している。主人公カフカが怪獣8号であることが発覚し防衛隊に拘束されるまでの物語がダイジェストで描かれる一方、後半の一部エピソードを割愛したことで、保科VS怪獣10号の激闘シーンとラストのカフカの超巨大余獣爆弾に対する活躍がより際立つ構成となった。この再編集により、カフカだけでなく保科のヒーロー性も強調され、劇場上映に適した形へと生まれ変わっている。初めて本作を総集編で鑑賞する方も、後からテレビシリーズの第11話と第12話を視聴することで、物語の全体像を完全に把握できるだろう。
同時上映される短編『保科の休日』は、人気漫画『食戟のソーマ』の原作者である附田祐斗がストーリー原案、テレビアニメ『Dr.STONE』シリーズのシリーズ構成/脚本で知られる木戸雄一郎が脚本を務めており、日々の激しい任務の合間に防衛隊員たちに訪れる貴重な休息日の様子が描かれる。常日頃からトレーニングに明け暮れ、休日の過ごし方をすっかり忘れてしまったレノは、伊春に誘われ同じく非番の保科を共に尾行する。

『保科の休日』というタイトル通り、防衛隊第3部隊副隊長・保科宗四郎が中心となる本作。保科といえば常に糸目で関西弁を話し、飄々とした掴みどころのない雰囲気を持ちながら、戦闘時には容赦ない冷酷な一面も見せるというギャップの持ち主でもある。本編での緊迫した戦闘シーンを見た後に短編を観ることで、保科の意外な素顔や普段見せない一面がより立体的に感じられるのではないか。ネタバレを避けるため、内容には深く言及しないが、短編はコメディ要素を含みつつも意外性のあるラストを楽しめる内容になっている、とだけ伝えておきたい。




















