『ペーパー・ハウス・コリア』ユ・ジテの真の目的は? “本当の泥棒”と対峙する強盗団
Netflixで韓国ドラマ『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』パート2の配信がスタートした。前回の配信から約半年。第6話でストップしていた本作の続きを早く観たいと待ち焦がれていた人も多いだろう。
物語をおさらいすると、南北に分断されていた朝鮮半島の統一が目前に迫り、両国の分断の象徴だった共同警備区域に共同経済区域(JEA)が作られた。ここでは南北のさまざまな企業が参入し、人々も自由に行き来している。
南北の政治家が会談を開こうとしているその時、共同経済区域(JEA)統一造幣局に8人の強盗団が押し入った。彼らは、ベルリン(パク・ヘス)、トーキョー(チョン・ジョンソ)、モスクワ(イ・ウォンジョン)、デンバー(キム・ジフン)、ナイロビ(チャン・ユンジュ)、リオ(イ・ヒョヌ)、ヘルシンキ(キム・ジフン)、オスロ(イ・ギュホ)。それぞれバックグラウンドの違う8人が、教授(ユ・ジテ)の指示のもとに、4兆ウォンを奪取する計画を立てている。
人質にとられた、統一造幣局で局長のチョ・ヨンミン(パク・ミョンフン)や造幣局の職員で局長の元不倫相手のユン・ミソン(イ・ジュビン)、アメリカ大使の娘・アン(イ・シウ)らは、強盗たちに従いながらも、さまざまな思惑に翻弄されていく。
警察側もチームワークが盤石とはいかず、交渉チーム長のソン・ウジン(キム・ユンジン)と北朝鮮出身の警察要員、チャ・ムヒョク(キム・ソンオ)が対立。JEA警察署長のユン(パク・スヨン)は、ウジンの元夫で統一未来党の議員、キム・サンマン(チャン・ヒョンソン)の言いなりで頼りない。
さまざまな人間模様が描かれる中、パート2では韓国版オリジナルキャラクター・ソウル(イム・ジヨン)も登場し、韓国版ならではのストーリーが怒涛のごとく展開していく。
※以下、パート2のネタバレあり。
教授の本当の目的は? 南北統一に隠された深い闇
前半の展開を観て、教授が企てた今回の作戦は、お金のためではないことに多くの人が気付いているだろう。「南北統一」を進めていく政治家やそれを支援する財閥富裕層。数々の韓国ドラマで描かれている政治の腐敗や財閥の横暴が今回もテーマになっているのだ。
かつて大学で教鞭をとっていた教授に目をつけた国会議員のキム・サンマンは、統一を前に北朝鮮が開放政策を検討している中、経済モデルの考案を教授に依頼していた。しかしキム・サンマンは、教授が考えた経済モデルを、政治家や財閥などの金儲けに利用し、私腹を肥やしていく。
そのことに憤りを感じた教授は「本当の泥棒は政治家や富裕層なのだ!」ということを、世の中に知らしめるために今回の計画を立てたというわけだ。
明らかになる教授とベルリンの関係
教授はもともと北朝鮮出身の脱北者で、ベルリンと実の兄弟ということが明らかになった。教授の両親は、不治の病を患っているベルリンを助けようと脱北を決意するが、結局成功したのは教授と父親のみ。母親は射殺され、ベルリンは収容所に連行されて25年間苦しめられることになる。
教授は父親とともに韓国に来たものの、生活は楽にならなかった。北に残してきたベルリンを呼び寄せるために父親は銀行強盗をするが、警官に射殺され失敗に終わる。「北では階級が世襲され、南では富が世襲される」と教授はつぶやく。自らの経済モデルを金持ちに利用されてしまった悔しさと後悔、父親が成し遂げられなかった計画、どの世界にいても地道に働く一般人が苦労をしなければならない現実を目の当たりにして、造幣局を襲う計画を立てたのかもしれない。
そしてその計画は、生き別れた弟・ベルリンとともに成し遂げるべきだと決意し、脱北に成功し、ロシアに身を寄せていた弟を探し出す。パート2では、そんな教授とベルリンの絆がたっぷりと描かれていく。
ベルリン、トーキョー、ソウル……魅力的な強盗団が活躍
パート2では、さらにそれぞれのキャラクターの特徴が際立つシーンが満載だった。パート1でベルリンは、すぐに銃口を向ける激情型の性格として描かれたが、今回は頭の回転が非常に早く、危機的な状況を打破する立役者として活躍をした。
通信手段を遮断され、教授と連絡を取ることができなくなった時も、トーキョーと芝居をうつことで、教授と接触することに成功する。あたかも仲間割れをしたかのように装って、トーキョーを警察に差し出す作戦はスリル抜群だ。「教授がこの展開を理解しなかったらどうする?」という他のメンバーの心配をよそに「絶対に分かるはず」と断言するベルリン。そこに兄弟の絆が感じられた。
危険なミッションを引き受けたトーキョーの見せ場も多い。新たに登場したソウルとともに警察側と迫力ある銃撃戦をみせる。カメラワークが秀逸で観ている側も一緒に戦っているような気分になるリアルさだった。そして、出番が少ないながらも、強烈な印象を残したソウルは、鋭いまなざしと俊敏な身のこなし、そして何よりベルリンを慕う熱い想いに胸がギュッとなる。
いよいよ作戦がクライマックスを迎え、造幣局から脱出する際にトーキョーが仲間に向けて語る言葉が感動的だ。「最初はみんなが気に入らなかったけど、今はみんなが好き。ここから一緒に出る!」と笑顔を見せる。当初はお互いに心から信じることができなかった強盗団たちが、深い絆で結ばれたことを象徴する場面となった。
「本当の泥棒たち」のおぞましい姿
この作品のクズキャラをあげるとするならば、間違いなくキム・サンマンと北朝鮮の平和統一委員長、チョン・ヨンスだろう。この2人に比べると、パート1でクズキャラの筆頭だった統一造幣局、局長のチョ・ヨンミンはかわいいものだ。
チョン・ヨンスは、ベルリンが収容されていた収容所の元所長で、収容者を虐待してきた人物。そしてソウルの義理の父親でもあり、ソウル自身も虐待を受けてきた。それを救ったのがベルリンなのである。
ウジンの元夫のキム・サンマンは、統一後の大統領候補として名前があがっている人物。ウジンにDVをしていたということで離婚訴訟中だが、自分の利益のためには手段を選ばない人物だ。教授が考えた経済モデルで私腹を肥やした2人だが、その秘密を強盗団が握っていることを知り、皆殺しにしようと画策する。
警察の捜査本部に乗り込み、指揮をとるJEA警察署長を押しのけて、強引に指示をするキム・サンマン。「人質や市民が多少巻き添えになってもいい」と自分を守るために他人の命を粗末に扱う態度に憤りを覚えてならなかった。救いだったのは、警察署長のユンとチャ・ムヒョクが最後の最後で人間らしさを取り戻してくれたところだ。彼らもキム・サンマンの態度を目の当たりにするうちに「本当の泥棒は誰なのか」ということに気付いていったのかもしれない。