『バック・イン・アクション』で俳優業復帰 キャメロン・ディアスから考える映画界の変化
![キャメロン・ディアス10年ぶり復帰作を読む](/wp-content/uploads/2025/01/20250128-backinaction-05.jpeg)
「現役復帰」という意味を持つタイトルの配信映画『バック・イン・アクション』がNetflixからリリースされた。その名の通り、俳優キャメロン・ディアスの10年ぶりの映画復帰作である。
彼女のファンにとっては間違いなく朗報であり、1990年代〜2000年代の熱心な映画ファンにとっても、懐かしさをおぼえるはずだ。この復帰は、共演者となったジェイミー・フォックスが熱心に復帰を勧めたことが大きな理由になったといわれている。
ここでは、そんな“復帰作”としての意味を持たせられた本作『バック・イン・アクション』の内容を追いながら、キャメロン・ディアスの過去と現在が映し出す、映画界の変化を考えていきたい。
『マスク』(1994年)や『メリーに首ったけ』(1998年)、『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)、『ホリデイ』(2006年)、『ナイト&デイ』(2010年)など、主にコメディ、アクション、恋愛映画など、とくに娯楽分野でめざましい活躍してきたキャメロン・ディアス。多くの役柄での弾けるような演技や、底抜けに明るい笑顔が多くの観客の心をとらえていた。
しかし、ハリウッドでは元来、「女優には“40代の壁”がある」と噂されてきた。現在60代のジーナ・デイヴィスは近年、40歳を過ぎると突然オファーが減り、限定的な役しか演じられなくなる場合が多いことを、自分の体験から告発したことで話題となった。マギー・ギレンホールやエマ・トンプソンも同様の発言をしていて、アカデミー賞最多ノミネートを誇るメリル・ストリープですら、「40歳を過ぎると魔女役ばかりオファーされるようになった」と言っている。
もちろん、ハリウッドに年齢についての明確なルールが存在しているわけではないだろうが、俳優たちの同様の証言が絶えないところを見ると、何らかの不文律が存在していたことは確かだと考えられる。「家庭生活を優先したかった」と語り、42歳で引退状態となったキャメロン・ディアスの決断の裏に、この「40歳の壁」が何らかの影響を及ぼしていたのかは分からないが、もし俳優業を継続していたとして、それまで通りの好条件を維持していくのは、やはり難しかったのではないだろうか。
しかし近年になって、状況は大きな変化を見せている。メグ・ライアン、ニコール・キッドマン、ジェニファー・ロペス、レネー・ゼルウィガー、ウィノナ・ライダー、ブライス・ダラス・ハワードなどなど、若い頃から人気のあった40、50、60オーバーの女優たちが、いま話題作に主要な役柄で起用され、強い輝きを見せて支持を得ているのである。これは、とくに#MeToo以降に、女性への「エイジズム」が問題視される機会がハリウッドで増えた結果だと考えられる部分がある。
キャメロン・ディアスの主演での復帰も、この波に乗った企画だと考えられ、業界の新たな状況が彼女の背中を少なからず押すことに繋がったはずである。男性の俳優同様に、女性もまた年を重ねても主演俳優として輝けるという姿を見せることは、多くの女性たちに自信を与え、生きやすい社会に寄与することにもつながるはずなのだ。そのような考え方を含めることもまた、娯楽作品の要素となり得るようになってきたのである。
腕利きのスパイだった夫婦が、現場に復帰してアクションを繰り広げる本作『バック・イン・アクション』は、キャメロン・ディアスの魅力を、過去の作品と変わらず描いている。本作の脚本は、世界に影響力を発揮する表舞台を降りて家庭を持ち、幸せな毎日を送りながらも、いつかは刺激的な仕事へと復帰したいという、元スパイ・エミリーの隠された願望を叶えていく内容となっている。実際に、一人の女性としてのキャメロン・ディアスが俳優業に対してそのように考えていたかは別として、少なくとも観客に、そのような見方を促す物語であることは間違いない。