『べらぼう』“絵師”唐丸の正体を考察 子役・渡邉斗翔が放つ“天才”の説得力

渡邉斗翔演じる唐丸の正体について、視聴者の間でさまざまな憶測が飛び交っている。
NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第4回で、唐丸が蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)のピンチを救った。礒田湖龍斎(鉄拳)が描いた見事な下絵を布袋に入れておいたところ、蔦重の義兄・次郎兵衛(中村蒼)が敷物と間違えて花器の下に敷き、その花器を駿河屋の猫が倒したため、下絵が水びたしになってしまった。そんな中、唐丸は落胆する蔦重に「試しにおいらに直させてもらってもいい?」と申し出る。そして唐丸は、元の絵と同様の見事な下絵を描き上げるのだった。

唐丸は、蔦重が明和の大火の際に助け出した少年である。火事の衝撃で自分の名前も思い出せずにいるが、蔦重のもとに身を寄せ、仕事を手伝う「小さな相棒」だ。そんな唐丸を演じる渡邉は、2024年に放送された大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)にも出演。藤原道長(柄本佑)と源明子(瀧内公美)の間に生まれた巌君(後の藤原頼宗)を演じ、一条天皇(塩野瑛久)の前で見事な舞を披露していた。
渡邊の演技からは、自分の面倒を見てくれる蔦重を深く信頼している様がうかがえる。蔦重の名を呼ぶ懐っこい声色や、さまざまな壁に阻まれ苦戦する蔦重を心配そうに見つめるまなざし、本作りに奮闘する蔦重を心の底から尊敬するような表情が印象深い。

加えて第4回では、錦絵に魅入られる演技が魅力的に映った。錦絵を食い入る様に見つめていた唐丸は、彼にしては珍しく、蔦重が話しかけても気もそぞろ。それだけ目の前の絵に魅了されているのだ。絵を見つめる眼は輝いていた。この場面での演技には、子どもらしさと後の場面で発揮される画才をうかがわせる凄まじい集中力が感じられ、胸を打つ。蔦重と次郎兵衛の前で、下絵を描き上げた後、唐丸は「残り、やるね」と再び下絵作りに取りかかる。下絵を写し取るその横顔は凛としていた。
そんな唐丸の正体について、SNSなどでは「唐丸は、写楽? 歌麿? 北斎?になる可能性あるよね! 」「唐丸は歌麿の幼少時代なのか? いや、写楽の子供時代なのか?」「唐丸は写楽なのか北斎なのか気になって仕方がない」といったコメントが見られる。唐丸は後の喜多川歌麿なのか、それとも東洲斎写楽か、葛飾北斎か。
喜多川歌麿役はすでにキャストが発表されている。演じるのは染谷将太だ。唐丸を演じる渡邊は過去の出演作において、主人公の幼少期を演じていることが多く、歌麿の幼少期を渡邊、青年期を染谷が演じる可能性も考えられるが、NHKが2023年10月5日に公開した記事中の人物紹介には“幼い頃、絵師・鳥山石燕のもとで絵を学び、その後、蔦重と出会う”とある。これを文字通りに受け取るとなると、唐丸と蔦重がすでに出会っていることから、歌麿説の可能性は低いのかもしれない。
生年や出自が謎という点で、東洲斎写楽か葛飾北斎のどちらかだと推測する視聴者もいる。東洲斎写楽は江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、約10カ月という短い期間に役者絵などさまざまな作品を版行したのち、忽然と姿を消した謎の絵師として有名だ。火事の衝撃で記憶をなくした“謎の少年”・唐丸との親和性は高いといえる。一方、葛飾北斎には幼年期に貸本屋で働いていたという説がある。この説は出所が不明とされており、北斎もまた出自が謎に包まれているが、貸本業を営む蔦重と行動する唐丸につながる部分があるともいえる。