山﨑賢人と北村匠海に重なるもの 彼らの生み出す“主人公像”と俳優としての歩みとは?
大人気マンガを原作とした『キングダム2 遥かなる大地へ』が好スタートを切ったなか、Netflix配信ドラマ『幽☆遊☆白書』のキャスト情報が発表され大きな話題となった。前者で主演を務めるのは山﨑賢人で、後者は北村匠海だ。ともに多くの“マンガの実写化”に主演俳優として挑んできた存在であり、彼らに重なるものを感じているのは筆者だけではないだろう。そこにはどんな秘密があるのだろうか。
まずはじめに、山﨑と北村が主演俳優として挑んだマンガ実写化作品の数々を振り返ってみたい。山﨑の主演映画は2010年代の頭から存在するが、マンガを原作としたものに絞ってみると、その数年後のことになる。彼はいくつもの作品で、その後のエンタメ界を牽引していく若手女性俳優らとダブル主演を務めた。『L・DK』(2014年)では剛力彩芽と、『オオカミ少女と黒王子』(2016年)では二階堂ふみと、『四月は君の嘘』(2016年)では広瀬すずと、『一週間フレンズ。』(2017年)では川口春奈と。いずれも“恋愛”の要素が詰まった作品だ。それから2017年には少年マンガ原作の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』で単独主演を務め、より身体を扱った演技ができることも実証。コメディ作品『斉木楠雄のΨ難』(2017年)をはさみ、『キングダム』(2019年)での主演へと至った。『キングダム』以前の作品は同世代の若手俳優が集ったものが多かったが、この間に文芸作品の実写化などに参加した経験も大きいのではないかと思う。若手俳優のなかでの人気者というより、日本の俳優陣のなかで主役を張れる存在へと大飛躍した印象だ。
一方の北村はというと、彼は子役時代からキャリアをスタートさせているため、その出演作数は年齢に対してかなりのもの。作品のジャンルも演じてきた役のタイプも多岐にわたる。少女マンガが原作の『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年)では浜辺美波、福本莉子、赤楚衛二らとのカルテットで主演を務め、“とんかつもフロアもアゲられる男”を演じた『とんかつDJアゲ太郎』(2020年)で映画単独初主演。いずれもコロナ禍1年目の大変な年だとあり、背負わされたものは大きかったのではと思うが、翌年公開の少年マンガの実写化『東京リベンジャーズ』にて主演を務め、苦境を強いられていた映画界・映画館が活気を取り戻すのに貢献した。それも、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮といった同世代の猛者どもを主演として率いてのことであり、北村は自身が真の意味で主役を担える器なのだと同作の成功をもって示したといえるはずである。
ひとまず二人が出演した“マンガの実写化作品”を並べてみたが、同世代の他の俳優にはない共通点が彼らにはある。それは、それぞれの代表作の一つがマンガ原作の映画であり、いずれも今後の日本の映画シーンを語るうえでの重要作だということ。そう、山﨑が主演した『キングダム』も、北村が主演した『東京リベンジャーズ』も、どちらもその年の“実写邦画作品”のなかでナンバーワンに輝いているのだ。しかもどちらにも「続編」がある。『キングダム2』が好スタートをきったのはすでに述べている通りであり、『東京リベンジャーズ2』は製作決定が発表されたばかり。「続編」が作られるには、それ相応の条件が整っていなければならないだろう。両者ともに日本の映画シーンにおいて“一番”を穫れる作品で主役を張れる器であり、しかもその看板を背負い続けられる存在だと多くの人間が認めている証なのである。
しかしなぜこうも山﨑と北村は、“マンガの実写化”に呼ばれ続けるのだろうか。その理由の一つは、まるでマンガから飛び出してきたかのような、“熱演”とも呼べる演技を実践できるからだと思う。筆者個人としては、“熱演”というものはあまり好きではない。その多くが演じることに熱くなり、作品の描く世界観の枠組みからはみ出してしまうからだ。ところがマンガの主人公の場合、この“はみ出し”が起こり得る。読者の想像を優に超えてしまうのが、マンガの主人公というものだろう。こと、現実離れした少年マンガにおいてはそれが顕著。山﨑も北村もこれを体現できるのだ。