『ちむどんどん』暢子が兄妹の思いを背負って走る 失敗をおおらかに包むユーモアの効用
父・賢三(大森南朋)との早すぎる別れによって比嘉家は困窮。母の優子(仲間由紀恵)は現金収入を求めて工事現場でまかないの仕事を始めるが、暮らし向きは好転せず、子どもたちの学用品にも事欠くありさまだった。
『ちむどんどん』(NHK総合)第7話では、暢子(稲垣来泉)が家族の思いを背負って走る。長男の賢秀(浅川大治)は、同級生からボロボロのズックをからかわれる。良子(土屋希乃)や歌子(布施愛織)とともに「ボロボロ兄妹」とののしられ、怒りに震える賢秀は当時の流行ギャグ「ガチョーン」でやり返すが、和彦(田中奏生)から使い方が間違っていると指摘される。
アメリカ施政下の沖縄で貴重な現金収入を得るため、優子は男たちに交じって力仕事に汗を流す。未亡人とはいえ、限られた仕事しかない当時の厳しい状況が伝わってくる。子どもたちもそれぞれが母の苦労を受け止めていた。暢子は「絶対見返してやるからよ」と運動会でのリベンジを誓い、そんな暢子を見た歌子は、苦手なかけっこを克服するため智(宮下柚百)や和彦と特訓に励むのだった。
子育ての苦労を知る親方(肥後克広)の気遣いもあって、優子はようやく賢秀のズックと良子の体操服を買うことができた。だが、新品のズックと体操服は、豚のアベベによって見るも無残な姿に変わり果ててしまう。『ちむどんどん』は、悲喜こもごもの人間模様を通じて、家族の絆を鮮やかに映し出す。シリアスな場面で挿入されるユーモアの効用とも言うべき、失敗をおおらかに包むバランス感覚が秀逸だ。最下位に終わった歌子に、智は「俺にとっては歌子が一等賞」と言って、手作りのメダルをプレゼントする。比嘉家を取り巻く人々の優しさと、どんな時でも笑顔を忘れない明るさに救われた。
良いところなしの兄妹のため、徒競走の一等賞を狙った暢子だったが、まさかのアクシデントに襲われる。「弱り目にたたり目」ではないが、一度不運な出来事が起こると、次々と不運に見舞われる。一家の大黒柱である賢三が亡くなってからというもの、比嘉家の不運はとどまる所を知らない。貧乏のせいと言えばそうだが、悪い流れを断ち切る何かが必要だ。こんな時、賢三ならどんな言葉をかけるだろう。一抹の心細さを感じつつ、きっと暢子たちならこの逆境を乗り越えられると信じている。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK