『俺の家の話』が名作となった理由がわかる? オーディオコメンタリーでの貴重な証言の数々
連続ドラマ『俺の家の話』のBlu-ray&DVDが8月13日に発売される。
2021年の1~3月にかけてTBS系の金曜ドラマ枠で放送された本作は、42歳のプロレスラー・観山寿一(長瀬智也)が父親を介護しながら人間国宝の能楽師である父の後を継ぐために、プロレスラーを引退して実家に戻るところから始まるホームドラマだ。
脚本は宮藤官九郎、チーフプロデューサーは磯山晶。そして主演は『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)、『うぬぼれ刑事』(TBS系)といった宮藤と磯山が手掛けたドラマで主演を務めてきた長瀬智也。
今年の3月にジャニーズ事務所を退所することが決まったため、結果的に長瀬の俳優引退作となった『俺の家の話』だが、物語もまた、今まで3人が作ってきたドラマと、俳優・長瀬智也にとっての集大成と言えるものとなっていた。
寿一にはプロレスラー、能楽師、父親の介護に悩む息子、離婚した家族との関係に悩む父親といった様々な顔がある。当初、物語は25年ぶりに観山家に戻ってきた寿一が、父の介護をきっかけにバラバラだった家族を一つにまとめ上げ、最終的に父親の寿三郎(西田敏行)の死を寿一が看取ることで、新しい観山家の家長になるかと思われた。
しかし、最終話で待っていたのは、寿一が突然亡くなり、幽霊になるという予想外の結末だった。この最終話によって、本作はドラマ史に名を残す名作となったと言えるだろう。
今回のソフト化にあたり、宮藤官九郎と磯山晶、そして観山寿三郎を演じた俳優の西田敏行によるオーディオコメンタリーが最終話に収録されている。
コメンタリーでは、最終話の各シーンについて3人が解説しながら、Twitterで募集した質問にも答えるものとなっている。
宮藤は脚本家として、西田は俳優として各シーンについて語り、磯山はチーフプロデューサーとして撮影の裏側を語ると同時に、その場にはいないチーフ演出の金子文紀がこだわった部分について触れている。
面白いのは、同じドラマでも、立場によって見えている部分が微妙に違うということ。現場を知る磯山と西田は、長瀬を筆頭とする出演俳優たちの魅力について主に語り、宮藤は脚本段階でイメージしていたことと映像化された際の印象の違いについて語っていた。どの演者も狙い通りうまくハマったと語られる中、予想外の演技を見せたと3人が絶賛したのが、謎の介護ヘルパー・志田さくらを演じた戸田恵梨香。
当初、宮藤は、もっとしたたかな女性としてさくらをイメージしていたそうだが、戸田の芝居によって印象は大きく変わったという。
長瀬と西田が演じる親子のやりとりもそれは同様で、当初はもっととげとげしく言い合いになる場面が増えるかと思っていたが、二人の掛け合いになると「喧嘩するよりも面白いこと」が起きてしまうので、あまりそっちには引っ張られなかったと宮藤は語っている。
役者の個性を活かすことを第一に考えていることが伝わる発言である。