『俺の家の話』が名作となった理由がわかる? オーディオコメンタリーでの貴重な証言の数々

 物語の面においても、狙い通りに行ったところもある一方、結果的にうまくピースがハマった場面も多かったという。

 中でも驚いたのは、最終回で登場した能の演目「隅田川」についてだ。「隅田川」は息子を亡くした狂女の話で、劇中では死んだ寿一と寿三郎の関係に重ねられていた。

 西田はこのドラマを「隅田川」ありきで書かれたと思っていたそうだが、宮藤は寿一が死ぬことは決めていたが「隅田川」は頭になく、ふさわしい演目がないかと聞いたところ「隅田川」に決まったという。

 コメンタリーを聴いていると、宮藤の脚本は細部まで作り込まれているように見えるが、実は余白のある作りとなっており、その余白を俳優や演出の個性によって埋めていくことで、物語が立体化していったと感じる。

 磯山によると、チーフ演出の金子文紀は「隅田川」を研究し、物語とシンクロさせるため、映像を細かく練っていたそうだ。同時に脚本の曖昧な部分(たとえば第1話から寿一のモノローグは登場するが、これは死んだ寿一が語っているのか?)に対して、何度も質問し、内容を詰めていったという。

 また、最終話では寿三郎にだけ死んだ寿一が見えるという場面があるため、寿一のいる場面といない場面を同時に撮ることが多かったのだが、この2種類の場面を撮るにあたっても、様々な工夫を金子は施している。

 最終話は、一見普通の日常だが、どこか違和感があるという不思議な場面の連続で、「なにかおかしい」という感触が、やがて「寿一がすでに死んでいた」という現実に繋がっていくのだが、コメンタリーといっしょに最終話を観ると、一つ一つのシーンに作り手の思いと技術が込められているのがとてもよくわかる。

 『俺の家の話』の最終話は、単体で観ても素晴らしい映像作品となっている。だからこそ、脚本、俳優、演出がどのような形で取り組んだのかが記録されたこのコメンタリーは貴重な証言だと言えるだろう。本編を観て感動した方は必聴である。

■リリース情報
『俺の家の話』
8月13日(金)Blu-ray&DVD発売

・Blu-ray
価格:26,400円(税別)
仕様:2021年/日本/カラー/本編480分+特典映像124分/16:9 1080i High Definition/2層/音声:リニアPCM2chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)/全10話/4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)

・DVD
価格:20,900円(税別)
仕様:2021年/日本/カラー/本編480分+特典映像124分/16:9LB/DISC1~4:片面1層、DISC5~6:片面2層/音声:ドルビーデジタル2.0ch/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)/全10話/6枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク1枚)

【特典映像】
・メイキング
・インタビュー集
・長瀬×道枝×羽村 3Sインタビュー
・クランクアップ集
・「俺の家の話」web動画
・制作発表
・スポット集

【特典音声】
最終話オーディオコメンタリー(西田敏行×宮藤官九郎×磯山晶CP) 

【初回生産限定】
O.S.Dの「Hey!麺」ステッカー

【封入特典】
ブックレット

※仕様は変更となる場合あり。

出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
音楽:河野伸
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
製作:TBSスパークル、TBS
発売元:TBS
発売協力:TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBSスパークル/TBS

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