『イチケイのカラス』裁判所という“組織”の闇と対峙 竹野内豊らの戦いにみる正義のあり方

『イチケイのカラス』竹野内豊らにみる正義

 “裁判官版『HERO』”と言われるのは、それだけ作品のクオリティが担保されている証拠であろう。前回の第1話で暴行事件に端を発し、代議士の献金疑惑を暴くというダイナミックな展開を見せた『イチケイのカラス』(フジテレビ系)は、4月12日放送の第2話ではやくも裁判所という“組織”の闇と対峙する。最高裁事務総長の息子である地裁判事が有罪判決を下した傷害事件の差戻し審、いわばアンタッチャブルな案件の真実を捜査しなおし、圧力をかけられながらも戦う主人公たち。まだ第2話なのに、と思ってしまうのも致し方あるまい。

 人気料理研究家の深瀬瑤子(前田敦子)は育児によるストレスで鬱状態にあり、当時1歳半の長女を激しく揺さぶったとして傷害罪で有罪判決を受けるのだが、一貫して無罪を主張し続けていた彼女は判決を不服として控訴。しかし最高裁事務総長の香田(石丸謙二郎)の息子・隆久(馬場徹)が裁判長を務めた事件とあって、高裁は地裁に差し戻し。駒沢(小日向文世)から合議で進めることを言われるも、保身のために反対する坂間(黒木華)だったが、結局入間(竹野内豊)が裁判長を務めて審理に入ることに。早速いつもの入間劇場の幕が開けた矢先、隆久自らが圧をかけに現れるのである。

 今回のエピソードの主題となっているのは、乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome=SBS)。目立った外傷がなくとも、乳幼児に硬膜下血腫などの3つの症状が見受けられれば大人によって強く体を揺さぶられた、つまり虐待を受けたことが推定できるという理論だ。50年前にイギリスで提唱され、日本でも児童虐待が社会問題化したこの20年ほどの間で広く知られるようになった。しかしその一方で、海外ではすでに十数年前からその推定に科学的根拠が不十分であるという見方が強くなってきているのだ。

 現に日本でも数年前に、今回描かれたようにSBSを根拠にした児童虐待事件の有罪判決が覆るということが何度か続けて起きている。前述の3症状以外に、明確に高所からの落下や事故が確認できれば、と長年言われてきたが、それも見直されつつある。劇中ではまさに、病院の診察台という低い位置からの落下でも硬膜下血腫になる可能性があるということを提示し、画一的な判断基準によって、いわば真実を追究するどころか先入観だけで判決を下してきた司法の慣習に警鐘を鳴らす。これだけでもリーガルドラマとしての役割を果たしているといえよう。

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