山崎育三郎の豹変に戦慄 『殴り愛、炎』から目を逸らすことができない理由

『殴り愛、炎』山崎育三郎の豹変に戦慄

 怖いもの見たさで最後まで目を離せない。定期的に摂取したくなる「クレイジー恋愛ドラマ」が帰ってきた。『奪い愛、冬』、『奪い愛、夏』、『M 愛すべき人がいて』(ともにテレビ朝日系)の鈴木おさむが脚本を手がけた『殴り愛、炎』(テレビ朝日系)は、汗が飛び散り、拳が舞うドロキュン恋愛活劇となった。

 「愛の炎がいびつな形で盛り上がる」。鈴木おさむ作品と聞くと、出演俳優の怪演とトンデモな超展開を思い浮かべるが、本作も決してその予想を裏切らない。4月2日に放送された前編「スーパー外科医の崩壊」では、結婚を控えて幸せを満喫していた光男(山崎育三郎)の前に、婚約者・秀実(瀧本美織)の憧れの先輩、信彦(市原隼人)が現れる。

 清純なラブロマンスがドロドロの愛憎劇に様変わりする『奪い愛』シリーズのテイストは本作でも健在だ。総合病院を舞台に腹違いの兄弟や名家の確執、幼なじみの暗躍などドラマの定番設定には、鈴木流のスパイスがふんだんに散りばめられている。映画『ゴースト/ニューヨークの幻』の引用(デミキン≒デミ・ムーア)などいかにもロマンチックな描写が、一転してホラーな別の何かに変わるのは過去作と同様。「何がどうしてこうなった?」と思わず問いたくなるような力技で、恋愛ドラマの定型・常套句を踏襲しながら、ジャンルの壁を超えた面白さを追求している。

 通常と異なるシチュエーションを登場人物に与えて規格外のリアクションを引き出す作風は、ある意味心理実験的でもある。根底に人間への好奇心があるのは間違いない。狂言回しあるいは仕掛け人的な位置付けの家子(酒井若菜)は、作者の分身的なキャラクターと言えるだろう。酒井は水野美紀や松本まりかのような鈴木作品の狂気を担うポテンシャルがあることを証明した。家子以外のキャラが、極端にピュアかつ行動が短絡的なのも特徴でリアクションに主眼を置く本作の効果を際立たせていた。

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