岡山天音、マイブームは“選ばなかった方をとる”こと 「毎日が“究極の選択”です」

岡山天音、“選ばなかった方をとる”ブーム?

 一度観たら誰もが忘れられない存在感を残す注目の俳優、岡山天音。主演映画『王様になれ』『踊ってミタ』のほか、映画『新聞記者』やドラマ『同期のサクラ』(日本テレビ系)などの話題作に多数出演している岡山は、コメディ、シリアスなどジャンル問わずさまざまな作品で爪痕を残している。2021年にはすでにドラマ『直ちゃんは小学三年生』(テレビ東京系)、『バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~』(テレビ東京系)に出演しており、今後の動向にも目が離せない。

 そんな岡山が出演するHuluオリジナル『THE LIMIT』が3月5日から配信をスタートした。本作は、劇団「玉田企画」を主宰する演出家・玉田真也、お笑いコンビ・かもめんたるの岩崎う大、『かもめ食堂』『彼らが本気で編むときは、』の荻上直子の3人が描く、サスペンス、コメディ、ラブストーリーなど多彩なジャンルにわたる“半径3メートルの人間ドラマ”。

 第4話「ベランダ男」に出演する岡山に、どのように役と向き合ったか、本作のテーマとなる「究極の選択」について聞いた。(高城つかさ)

岡山天音が引かれた物語の“歪さ”

第4話「ベランダ男」

——“半径3メートルの人間ドラマ”という制約のある作品でしたが、はじめに、脚本を読んだ際の感想を教えてください。

岡山天音(以下、岡山):まず、物語の“歪さ”に惹かれました。観ている人が揺さぶりをかけられると言いますか、誰に感情移入して、自分のなかでこの作品をどのように結論づければいいのか最後までわからない、いい意味での気持ち悪さみたいなものがあって。そういった歪な作品と巡り会えることはあまりないので、自分にとってどういった体験になるのか、わくわくしました。

——岡山さんは、脚本のどのあたりでその“歪さ”を感じたのでしょうか?

岡山:制約がついているところももちろんですが……やっぱり、シチュエーションですね。一般的な作品だと、現在・過去と時間が区切られる場面もあったり、起承転結があったりするけれど、この作品はほとんどワンシチュエーションで進んでいくんです。そのあたりに“歪さ”を感じました。20分の長回しも含めて、自分にとって新しい経験になったと思います。

——完成した作品を観ても、その感覚は変わらず……?

岡山:むしろ、より強まりました。観終わったあとに、誰に感情移入すればいいのかわからなくなる、まるで迷子のような感覚があって……。いち視聴者としても不思議な作品だなと思いました。

——20分ワンカットで撮影されたとのことですが、演じるに向けて、どのような準備をされましたか?

岡山:ト書き(脚本内の役者のしぐさなどを指示した部分)を含めて台本をまるまる覚えました。これまでもト書きはもちろん覚えていたのですが、今回はその量が非常に多くて。というのも、僕が演じる入江は、基本的に“ある状況を外から眺め続ける傍観者”という役柄なので、セリフ自体はほとんどないんです。だけれど、その状況の当事者にとっては、さまざまな事象がおこっていて、入江はそれにリアクションをとっていく必要がある。これは「ベランダ男」ならではの準備でした。

第4話「ベランダ男」

——そもそもト書きは指示であって、しっかりと覚えることはあまりないですもんね。

岡山:そうなんです。今回は受け身の役だからこそ、部屋のなかで行なわれているやりとりにまつわるト書きや僕以外のセリフまですべて覚えました。これまでの僕にとって、ト書きはあくまで覚えたセリフの“すき間”にあるような印象だったんです。なので、ト書きの指示の文章まで正確に、一字一句逃さず覚えるということはあんまりなくて。その部分に神経を注いだのもはじめてでした。

——個人的には、冒頭、今後の展開がまったく読めないなかでの入江の背中が印象的でした。

岡山:あのシーン、すごく難しかったんです。ある“きっかけの出来事”が起こるまではほぼ背中で見せているのですが、視聴者にとっては「これは誰で、今どういう状況なんだろう」と想像を膨らませてもらう時間なわけですよね。制作側である僕らにも「こういうふうに受け取ってほしい」という狙いがあるので、物理的な部分を意識しました。いつ、どこで立ち止まるのか、どのくらい時間を置いて次の挙動に入るのか……そのさじ加減を監督と相談しながら芝居をしました。


——無言の時間が多いからこそ、視聴者によって受け取り方が変わりそうだなあ、とも思いました。

岡山:わかりやすいものは世の中に溢れかえっているからこそ、それぞれが意味を紐づけられる余白が残った作品になりましたよね。Huluという媒体だからこそ視聴者に最終的な判断を委ねられる作品が完成したと思います。

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