三宅唱が語る、2020年に映画監督として考えていたこと 「映画ならではの力を探りたい」

三宅唱が振り返る2020年

 新型コロナウイルスの感染拡大により未曾有の1年となった2020年。2021年1月現在もその猛威は変わらず、社会全体が大きな変革を余儀なくされている。映画界も興行、配給、製作、それぞれの場所で問題にぶつかる中、映画監督・三宅唱は何を考えていたのか。昨年1月の特別インタビュー(“映画館でかけるべき映画”を作り手たちは考えないといけないーー三宅唱が2010年代を振り返る)に続き、現在の率直な心境を語ってもらった。(編集部)

自分にできる準備だけは黙々と続けよう

――かなり想定外の1年だったと思いますが、まずは昨年同様、三宅監督の2020年から振り返っていきましょうか。

三宅唱(以下、三宅):2020年は、本当に人によって全然違うので、なかなか言いづらいところですが、僕自身はもともと2020年に撮影する予定がなく、だから撮影のスケジュールが大きくずれただとか、現場自体がなくなってしまうようなこともなくて。他の多くの方たちに比べれば、想定外の変化はかなり少なかったほうだと思います。

――もともと、そういう予定だったのですね。

三宅:はい。2020年は一回落ち着いていろいろ考える年にしよう、と年始に考えていました。ここ数年の仕事で頭も空っぽになっていたし、リフレッシュしないと面白いことできる気がしないわ、という。疲れてました。それで、実際にやっていたこととしては、2021年以降に撮ろうと思っている企画――何本かあるんですけど、そのシナリオを平行して書いたり、資料を読んだり、関連する映画を観たり。準備の年でした。

――ただ、そうは言っても、春先から状況は刻々と変化していって……2020年の4月7日には、一回目の緊急事態宣言が出されました。その頃、三宅監督はどんなことを感じていましたか?

三宅:やっぱり、まずは映画のことですかね。と言っても最初はあくまで自分本位の話なんですが、2020年は映画館にたくさん行こうと思って意気込んでいたのに、だんだん映画館に行きづらい世の中になった。すぐに「映画館は換気が良い場所なんだ」というニュースが出ていましたけど、映画館に限らず、音楽、舞台、とにかく人が集まるところは、まともなエビデンスもなく避けられるような情勢になっていって……「あの映画館のあの人、どうなるんだ?」と。それから、劇場公開第1作目を抱えている年下の友人の顔だとか、宣伝や配給の友人知人の顔だとか、順々に浮かんでいきました。

――映画館をめぐる動きとしては、緊急事態宣言が出されてすぐの4月13日に、三宅監督も賛同者に名を連ねている「ミニシアター・エイド基金」が立ち上がりました。

三宅:僕自身は鈍臭くて、具体的なことは何も考えられていなかったんですけど、濱口竜介監督から、「深田晃司監督と、こういうプロジェクトを進めようと思っているんだけど、協力してもらえないだろうか?」という連絡をいただいて。「先輩たちは、もうそんなアクションを起こし始めているんだ」と驚いて、賛同します、と。自分が何をやったのかって言われると、ほとんどゼロですが。

――そういう状況の中で、三宅監督はどんなことを考えていたのでしょう?

三宅:何を考えていたのかな……日々いろんなニュースが出てきて、それに右往左往するような状態だったけれど、それに振り回されるのは、僕は嫌というか、まずは自分のやれることをしっかり据えておこうというのは、早々に思っていたかもしれないです。僕のやれることと言っても、それは次の準備をコツコツ進めることでしかないんですけど。いま困っている人にすぐには何もできない自分の未熟さというか余裕のなさにイライラもしましたけど、もうしょうがないので、最低限、自分にできる準備だけは黙々と続けよう、という感じでした。

――そういう中で、創作に対する考えが変わったりはしましたか?

三宅:根本的にはまったくないと思います。海外ロケはもう数年無理だなとか、そういうことは思いましたけど、自分が映画に関わる核となる部分は変わらないです。

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