藤岡真威人&大友花恋が感じた北大路欣也の凄さとは? 『春を待つこころ』撮影秘話

藤沢周平の傑作小説をもとにしたオリジナル時代劇シリーズ『三屋清左衛門残日録』。好評のもとにシリーズを重ね、最新第8作『三屋清左衛門残日録 春を待つこころ』が時代劇専門チャンネルにて3月8日に放送される。
主人公の三屋清左衛門を演じるのは、本シリーズが代表作のひとつとなった北大路欣也。優香、金田明夫、麻生祐未、伊東四朗とお馴染みのキャスト陣のほか、『三屋清左衛門残日録』の世界に新たな風を吹き込むキャストも参加。
清左衛門と固い絆で結ばれていく青年剣士・窪井信次郎役には藤岡真威人、信次郎と互いに心を通わせていく小さな社の巫女・照日役には大友花恋が抜擢。放送を前に、北大路と藤岡、大友の3人に本作への思いを聞いた。また、心から嬉しそうに後輩との仕事を語る北大路の口からは、藤岡の父・藤岡弘、との秘話も飛び出した。(望月ふみ)
藤岡真威人&大友花恋が感動した“時代劇”の心

――改めて、本シリーズと三屋清左衛門役への思いを聞かせてください。
北大路:私はかつて仲代達矢さんが演じられた『清左衛門残日録』(1993年/NHK総合)を拝見していました。その後、私が60代半ばくらいのときに「やらないか」とお話をいただきました。仲代さんのドラマを観ていたし、改めて原作を読んでみて、「自分が演じるにはまだ早いんじゃないか」と感じてお戻ししたんです。そこから5年ほどして、もう一度お話をいただきました。ご縁ですよね。普通ならほかの方がやっています。70代に入り、第1作が始まりました。今までの経験を清左衛門の中にどう反映できるか、どう課していけるか、ちょっとした挑戦にワクワクしながら第1作を撮影しました。するとやはり藤沢先生独特の世界観があり、昔の話をやるという感覚ではなく、新鮮な感じを覚えました。そこから監督、スタッフ、共演者のみなさんがそれぞれの立場で思いを持って支えてくださって、みなさんと会うとすごい安心感で、毎回ほっこりします。
――時代劇の真ん中に立つことの責任と魅力についてもお願いします。伝統の継承という点も含めて。
北大路:私は13歳でデビューしました。少年時代、西部劇は見ていたのですが、規制があり、時代劇が作れない時代もありました。そんな大変な時代を大先輩、スタッフの方々が支えてきました。私は、大変な時期を乗り越えながらその職業のポジションを伝授していく厳しさを見てきました。いろんな作品に参加してきて、どの撮影所に行っても、どの現場に行っても、その思いは変わりません。
――どの現場でも?
北大路:日活でも太秦でも松竹でも大映でも、どの撮影所に行っても、みんなすごい。そうしたすごさは、われわれが京都の東映撮影所でやらせていただいている『三屋清左衛門残日録』の中にも残っています。だから私はなんて幸せな俳優だろうと思います。いまだに現役として長年みなさんが伝授してきた技術を、伝える現場にいられる。そこには照明、衣装、録音、いろんな技術がある。スタッフさんの作った世界でどう役を生きていくか、自然にそこに接していくかが私たちの仕事ですが、それだけスタッフの方々の気持ちを感じたら、ちゃんと応えたいと思います。本当に幸せですし、感謝しています。

――第8作となった『春を待つこころ』では、新キャストの藤岡さん、大友さんと共演しました。
北大路:緊張感がありますね(笑)。若い方々ってすごく新鮮だし、鋭さも持ってらっしゃるし、美しいし足は強いし、リズム感はある。歩くときも「負けてたまるか」とか、そういう気持ちがどこかにありますよ。それに今回、実際に対面してみて、「彼(藤岡)は想像と違って、なるほど、こういう魅力があるんだな」とか、「彼女(大友)はふっと寂しそうな顔をすると、手を差し出したくなるような、こんな雰囲気があるな」とか、本当に魅力を感じましたね。

――部屋に入られてからずっと、藤岡さん、大友さんを見る北大路さんの表情が嬉しそうです。おふたりは長く愛されている作品への参加、そして大先輩との共演はいかがでしたか?
藤岡:僕にとって初めての本格的な時代劇参加となりましたが、北大路さんをはじめ、キャストのみなさんが作られてきたこの世界観に、信次郎としてどう入っていけるかと、自分のなかで課題を感じていました。でも撮影に入ったとき、北大路さんをはじめ、スタッフさん、監督、キャストの方、みなさんすごく温かく迎えてくださって心がほぐれました。常にみなさんが作品をよくするために、話し合って、僕にも話しかけてくださって、ひとつひとつのシーンに心を込めて、そのシーンで何を伝えたいか、心をひとつにして作っていっていることが、初日から分かりました。そこに受け入れていただいて、自分でも「こうじゃないかな」とやっていくと、北大路さんやみなさんがちゃんと受け取ってくださるので、僕もまたボールを返していきました。そんな空気があったから、自分が思っている以上に自由に表現させていただけましたし、京都での約1カ月の撮影は、本当にいろんなことを学ばせていただいて、かけがえのない時間で、毎日感動していました。出来上がった本編を観ても、勉強や新たな気づきがあって、改めて感謝しています。

大友:第8作まで続くシリーズに参加させていただくというのは、みなさんにそれほど愛されている世界に飛び込むのだという嬉しさと、背筋の伸びる思いがありました。分からないことがたくさんあるので、全部教えていただこう、全部吸収しようという気持ちで、大先輩のみなさま、京都のスタッフのみなさまと向き合う日々となりました。北大路さんは、本当にずっと周りを見てくださっていて、私のことも見てくださいました。待ち時間に正座で話していたときに、ちょっと私が足先を変えただけで、すぐに気が付づいて、スタッフさんに「彼女に椅子を持ってきてもらえますか」とお願いしてくださったり。北大路さんは、優しさと力強さが、まさに清左衛門さんそのままで、私も照日も、ずっと助けていただいていました。


















