『おむすび』が第1話から解き放っていた“朝ドラヒロイン” 翔也はエポックメイキングな夫に

第22週「理想と現実って何なん?」の結(橋本環奈)を観ていて「おやじギャル」という言葉を思い出した。1990年代に流行った言葉で、結が物心ついた頃、流行っていたはずの言葉である。文字通り、おじさんのような女性ということで、おじさんがやるようなことをする。例えば、ゴルフに興じたり居酒屋で飲み食いしたり。1986年に施行された男女雇用機会均等法によって男女差を埋めていく気運がこのような女性を生み出したといえるだろう。
なぜ、結に「おやじギャル」を見たかというと、おしゃれカフェより居酒屋が似合うし、実際おじさんたちの圧にも負けてないというのもあるが、それよりも米田家の結と翔也(佐野勇斗)の役割である。劇中、語られることはあまりないが、家事や子育てを翔也のほうが多く担っているように見える。結は病院勤務で多忙であり、翔也は家業・理容室を手伝っていて比較的時間がとりやすそうであるのと、娘・花(宮崎莉里沙)がサッカーというスポーツをやっているため、元野球選手である翔也と趣味が合う。だから自然と家事もやるし、花といっしょに過ごす時間も結よりも多くなっていくのだろう。

まるで、お父さん(結)はいつも仕事で忙しいから、お母さん(翔也)と話したり一緒に行動する時間が多いというような雰囲気だ。お父さん(結)は仕事が忙しいし、何かと居酒屋に行くし、ギャル仲間とカラオケにも行く。一方、翔也はいつも家と理容室との行き来で、休みの日は花とサッカー。誰かと飲みに行ったりしない。女性から見たらとても理想的な夫である。翔也が米田姓を名乗ったときだけ議論があった以外、あえて、一般的な夫婦の役割と逆になっていることを、劇中では語らないし、そこを問題視するのではなく、当たり前のように行っていることが令和的な理想形と言えるだろう。
いまや、女性だから家事と子育てを担うという認識が崩壊している時代だから、結があまりに花といっしょに過ごしている場面が少なすぎないかと気になることもないだろう。これが昭和や令和のドラマであれば、違和感を覚える声も多かったかもしれないが。翔也はもともと体力も人一倍あるので、理容室と(たぶん資格をとる勉強もしている)、子育てと家事とをやっていても身体的負担はなさそうだ。本人たちが納得していればまったく問題はない。男女を逆転させた「おやじギャル」という存在が流行った時代を経て、男女の役割を逆転させるだけでなく、男女関係なく、それぞれの特性を生かしてより良く生きる、そういう時代になっているのが『おむすび』である。





















