『風の谷のナウシカ』は2020年を照らし返す作品? 宮崎駿にとっての「通過点」からの変動

『風の谷のナウシカ』は2020年を照らし返す作品? 宮崎駿にとっての「通過点」からの変動

 12月25日、今年最後の『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)の作品に選ばれたのは、宮崎駿監督のアニメ映画『風の谷のナウシカ』(以下、『ナウシカ』)だ。

 舞台は“火の七日間”と呼ばれる最終戦争で文明社会が滅んだ1000年後の未来。わずかに生き残った人類は、「腐海」と呼ばれる菌類から放出される有毒の瘴気と、「蟲」と呼ばれる巨大生物に怯えながら暮らしていた。そんな中、辺境にある風の谷の民は、酸の海から吹く風によって瘴気から守られ慎ましく暮らしていた。だがある日、トルメキア王国の巨大船が風の谷に不時着。巨大船の積荷は火の7日間に世界を滅ぼした人型兵器・巨神兵の生き残りだった。風の谷の姫・ナウシカはトルメキア帝国とペジテ市の争いに巻き込まれていく中、腐海が存在する真の意味を知る。

 『ナウシカ』は宮崎が執筆した原作漫画を84年に宮崎自身が監督したものだ。プロデューサーは高畑勲。本作の成功をきっかけにスタジオジブリが結成され、1986年の『天空の城ラピュタ』以降、数々のヒット作を世に送り出すことになっていく。

 2019年には新作歌舞伎として上演された『ナウシカ』だが、本作が後進の作家たちに与えた影響はとても大きい。中でも、若き日の庵野秀明が、物語終盤に登場する巨神兵の原画を担当していたことは有名な話だ。

 庵野は『巨神兵東京に現わる』という特撮短編映画を樋口真嗣(監督)と共に手がけている。庵野が総監督を務めるアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する人造人間・エヴァンゲリオンの造形はもちろんのこと、庵野(総監督)と樋口(監督)が手掛けた怪獣映画『シン・ゴジラ』にも影響を与えている。

 すでに宮崎は庵野に『ナウシカ』の映像化を許可しているようだ(参考:『風立ちぬビジュアルガイド』角川書店 )。おそらく『エヴァ』の劇場版が一段落したら、何らかの形で漫画版『ナウシカ』の映像化(タイトルは『シン・ナウシカ』か?)に取り掛かるのだろう。そう考えると『巨神兵東京に現わる』も『エヴァ』も『シン・ゴジラ』も、『ナウシカ』の前日譚にも思えてくる。

 その意味で『ナウシカ』は今でも作品世界を広げつつある。だが一方で、アニメ版『ナウシカ』は、宮崎やジブリの最高傑作とは、言い難い作品でもある。

 後にジブリの演出や作画レベルがより高まったことの影響もあるが、元々、原作漫画の序盤の物語を、劇場アニメに脚色しているため、一本の映画としては、とてもいびつな構成だ。中でも、最後にナウシカが復活し、蒼き衣を着た伝説の救世主として語られた後、あっさりと終わってしまうエンディングは、いくらなんでも安易過ぎる。当時、高畑勲はインタビューで「プロデューサーとしては万々歳なんです。ただ、宮さんの友人としての僕自身の評価は、三〇点なんです」「宮さんはただの演出ではなく、作家ですから」と答えている。

 そして、「僕としては『巨大文明崩壊後千年という未来から現代を照らし返してもらいたい』と思っていたんですが、映画はかならずしもそういうふうになったとはいえないのではないか」と、『ナウシカ』の構成に疑問を呈している。(引用:『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』文春ジブリ文庫)

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