『鬼滅の刃』『君の名は。』大ヒットの要因に ufotableと新海誠から探るアニメーションの“撮影”の重要性

設立初期から撮影部を立ち上げたufotable

 2020年、『千と千尋の神隠し』を超える勢いで歴史的ヒットとなっている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。この作品を制作したufotableもまた撮影に対するこだわりの強い会社だ。

 アニメファンの間で、ufotableの撮影エフェクトが話題になり始めたのは2007年ごろだ。ufotableのオリジナルアニメ『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』のキャラクターの髪の毛にグラデーションがかかっていてどう表現しているのかと話題になったのだが、このグラデーションは撮影によって処理されている。他にも逆光を活かしたカットなど、光を巧みに用いた画作りが随所に見られる作品だ。

 ufotableの設立は2000年だが、2000年代前半ですでに撮影部を自社内に設立している。そのできたばかりのころに撮影部に配属された寺尾優一氏が、いまも撮影部の中心人物だ。『まなびストレート!』と同じ年から公開の始まった『劇場版 空の境界』シリーズでも撮影監督を務めた人物だが、洗練されたエフェクトワークと、キャラクターと背景の質感を近づけ空間になじませ、光源処理も見事で美しい夜の映像を作り上げることに成功。ここで確立されたスタイルが、以降のufotableの作風を決定づけたと言えるだろう。

 『無限列車編』も撮影によるハイレベルな表現が多く堪能できる作品だ。冒頭の墓のシーン、キャラクターに差す木漏れ日が風に揺られて微妙に揺れていて、まるで本当にその空間にそよ風が吹き、木々が揺れているかのような印象を与える。

 予告でも使用されているカットでは、列車内の電灯が明滅するところも、ただ画面全体が明滅するだけでなく、画面全体のどこに光が残り、消えるのかを非情に細かく作り込んでいる。逆光で描かれる魘夢のカットも美しく仕上がっている。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 本予告 2020年10月16日(金)公開

 列車内のシーンでも、色と光のコントロールで展開に合わせて盛り上げている。

「車掌さんがカチンと切符を切って煉獄が薄く目を開けたところから、色味が変わっていく。少しずつホラーテイストに変わっていくように撮り方に緩急をつけています。色を締めて、闇を深くするようなニュアンスで撮影処理が入っているんです」※8

 ufotableの作品群の中で、作画と撮影に関して特にユニークな試みを行ったのが2015年放送の『ゴッドイーター』だ。この作品は一瞥して通常のアニメとは異なるルックだとわかるだろうが、これは具体的には照明の当て方が一般的なアニメ作品とは異なる。

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