『MEG ザ・モンスター』から振り返る“サメ映画”人気 『ジョーズ』の壁をどう乗り越えた?

『MEG』から振り返る“サメ映画”人気

 『MEG ザ・モンスター』がフジテレビ系で8月8日21時より地上波放送されます。古代から生き続けていた恐竜時代の巨大サメが現代によみがえり、人々を襲います。この作品はそんなに残酷なシーンもなく、海洋冒険アクション映画としてもよくできているので、ホラーが苦手という人も十分楽しめるでしょう。一方劇場では『海底47m 古代マヤの死の迷宮』という、サメが出てくるスリラーが公開されています。この夏はちょっとしたサメブームですね。実はサメが出てくるホラー・サスペンス映画というのは非常に多い。“サメ映画”というジャンルワードがあるぐらいで、僕より詳しい方は大勢いらっしゃると思うのですが、なぜサメ映画がここまで人気なのか自分なりに考えてみたいと思います。

 実は『MEG ザ・モンスター』というのは日本独自のタイトルで、現代は“メグ”のままです。メグとは古代巨大ザメ、メガロドンの略。ただ日本だと“魔女っ子”みたいに愛らしいので(笑)、ザ・モンスターと補ったわけですが、ここで興味深いのは『MEG ザ・モンスター』であって『MEG ザ・シャーク』にしなかったことです。また『海底47m 古代マヤの死の迷宮』もインディ・ジョーンズっぽい冒険モノ風のタイトルで、サメ映画感はないですよね。つまりこれは両作をあまりサメ映画に見せたくなかったのではないかと思います。

 それは例えばブラッド・ピット出演の『ワールド・ウォーZ』が実質はゾンビ映画ですが、ゾンビという言葉を宣伝上使わなかったことに似ています。これは逆にいえばサメ映画やゾンビ映画がいかに多いか、ということの裏返しです。ですから『MEG ザ・モンスター』『海底47m 古代マヤの死の迷宮』も十把一絡げに“サメ映画”として売りたくなかったということでしょうか?

 サメ映画をブレイクさせたのは、なんといっても1975年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『JAWS/ジョーズ』。『JAWS/ジョーズ』以前のサメ映画というと、z956年に『The Sharkfighters(原題)』という作品があり、これは艦が沈没し、海に投げ出されたアメリカ海軍の兵士をサメたちから守るため奮闘する科学者を描いた作品です。これ以外にもサメとかワニというのは当時の冒険映画でピンチを演出するシーンで登場しています。1966年、TVドラマ版『バットマン』をベースにした映画では、バットマンにサメが食いつくというサスペンス(?)なシーンがあるのです。しかし『JAWS/ジョーズ』が画期的だったのは、人喰いザメ自体を“主人公”にしたことです。当時の映画評論の中で 『JAWS/ジョーズ』を“白鯨”や“キングコング”と比較するものがあったのです。白鯨は鯨、キングコングはゴリラですが、両者とも単なる生物を超えてもっと神がかった存在、モンスターとして描かれていました。『JAWS/ジョーズ』のサメ(ブルースという愛称があります)も単なる“海の脅威”を超えた、キャラの立った存在だったのです。

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