宮野真守が引き出した“懐かしい”マリオ 映画『スーパーマリオ』で迎える最高の大晦日
12月31日、年末のゴールデンタイムに、2023年に世界的な記録を樹立した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』がやってくる。
本作が描くのは、ブルックリンの街で奮闘する配管工の兄弟・マリオとルイージを主人公に、ピーチ姫やドンキーコングら馴染みの面々が織りなす予期せぬ冒険だ。誰もが知るマリオの世界を、まったく新しい角度から描き出す野心的な試みは、見事な成功を収めた。
その手応えは興行収入にも表れている。世界興収13億ドル超、国内でも140億円を突破という驚異的な記録。この数字は、本作がエンターテインメントとしての確固たる地位を築いたことを物語っている。
公開前、吹き替え版においては「マリオが日本語を話す」という新たな試みへの懸念の声も上がっていた。長年、チャールズ・マーティネーの英語ボイスに親しんできたファンにとって、それは自然な反応だったのかもしれない。
しかし、宮野真守演じるマリオは、そんな不安を見事に払拭してみせる。お馴染みの「Here we go!」は、まさにゲームから飛び出してきたかのような完成度だ。さらに印象的なのは日常会話のシーンにある。原作の持つ温かみとユーモアを大切に継承しながら、現代的な親しみやすさを纏った宮野の演技は、初めて耳にするはずなのに“なぜか懐かしい”マリオとして観客の心に自然と寄り添っていく。
音響監督の三間雅文からは「自分たちの演じるキャラの性格や目的を素直に入れていい」と言われたそうで、その自由度の高さが存分に活かされている。宮野は「Here we go!」「It's-a me!」といったマリオの代名詞とも言える台詞を忠実に再現しながら、独自の解釈でマリオの魅力を引き出していく。
しかし全編を通して違和感のない演技の中で、思わず笑みがこぼれる瞬間がある。それはレインボーロードでの緊迫のカーアクションや、ピーチ姫との特訓シーンで響く“宮野真守”でしかない叫び声だ(もはやこれを聞くために吹き替えを選んでもいいくらいだ)。マリオが宮野真守なのか、宮野真守がマリオなのか。その境界線が曖昧になるほどの没入感は、長年の宮野ファンにとって、この上ない「ご褒美」となっているはずだ。