河合優実、伊藤沙莉、古川琴音、石原さとみらの功績　2024年に活躍した女性俳優たち

　この2024年もまた、数々の演技者たちによる素晴らしいパフォーマンスに触れることができた。彼ら彼女らが生み出した瞬間を思い出してみると、ぐっと込み上げてくるものがある。

　ここではそんな者たちの中でもとくに印象に残った女性俳優10名に焦点を当ててみたい。映画、ドラマ、演劇のシーンに、彼女たちはどのような功績を残したのか。

伊藤沙莉

　朝ドラ『虎に翼』（NHK総合）を半年にわたって背負い続けた主演の伊藤沙莉は、間違いなく今年のエンタメ界の顔だろう。いや、同作は現代社会においても絶えず横たわっている問題の数々を扱ってきた作品なのだから、伊藤の存在の大きさはエンタメ界に限定されるものではないか。シーンごとの的確なポジショニングとパフォーマンスは、やはり長いキャリアに裏打ちされたものがあるからこそだろう。来る日も来る日も愉快な仲間たちとともに、お茶の間の視聴者をエンパワーメントし続けた。ヒロイン・寅子を演じられたのは、この世界に彼女をおいてほかにいなかったはずである。

河合優実

　2024年のエンタメ界の顔といえば、河合優実もそうだ。実在の事件をモチーフとした『あんのこと』では過酷な環境で育ったヒロインの人生を生き、気鋭監督とタッグを組んだ『ナミビアの砂漠』では新時代のヒロイン像を軽やかに鮮やかに体現してみせた。いずれも今年の日本映画の話題作であり、主演を務めた河合にとっても代表作になったはず。そのいっぽうで、宮藤官九郎が脚本を手がけた『不適切にもほどがある！』（TBS系）でお茶の間の人気者に。主演の阿部サダヲと共演した『ドライブイン カリフォルニア』（2022年）での演技も素晴らしかったので、またぜひ舞台でも彼女のパフォーマンスを拝見したい……。

見上愛

　俳優デビューからまだほんの5年で凄まじい活躍ぶりを展開する見上愛に関しても、この2024年は重要な年だったのではないだろうか。初の単独主演映画『不死身ラヴァーズ』が公開されたからだ。すでにいくつもの作品で主要な役どころを務められる器の持ち主であることを証明してきた彼女だが、作品の看板を背負ってトップを走ることもできる。そう私たちに示した。この勢いはますます加速していくのだろう。

森田想

　若くして長いキャリアを持つ森田想は、ヒロインを務めた『辰巳』での力演がぶっちぎりによかった。同作は「アウトロー映画」に分類されるものであり、女性の登場人物は極めて少ない（ほぼいない）。そのような中で葵という硬派なヒロイン像を立ち上げ、そのたくましい生き様をスクリーンに刻みつけたのだ。それでいて、ときおり少女のような表情をのぞかせる。胆大心小なパフォーマンスに魅了された。

石原さとみ

　国民的スターである石原さとみのキャリアにおいても2024年は語り継がれる年になったのではないだろうか。これまでの華やかなイメージを覆す主演映画『ミッシング』が公開されたからである。同作で石原は、娘の失踪事件を機に人間らしい“心”を失っていく女性を体現し、生き抜いてみせた。彼女がこの役に、この作品に、どれだけその心と身体を捧げたのか。スクリーンを越えて伝わってきたものである。