藤津亮太の「2024年 年間ベストアニメTOP10」 TVシリーズのみから選んだ10の名エピソード

藤津亮太の「2024年ベストアニメ」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2024年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、アニメの場合は、2024年に日本で劇場公開・放送・配信されたアニメーションから、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第15回の選者は、アニメ評論家の藤津亮太。(編集部)

・『〈小市民〉シリーズ』 第10話「スイート・メモリー(後編)」
・『義妹生活』 第12話「と」
・『負けヒロインが多すぎる!』 第4話「負けヒロインを覗く時、 負けヒロインもまたあなたを覗いているのだ」
・『僕の心のヤバイやつ』 karte18「山田は僕が好き」
・『真夜中ぱんチ』 第12話「The Last Live Stream」
・『ネガポジアングラー』 第8話「親子の関係、子供の成長」
・『ガールズバンドクライ』 第8話「もしも君が泣くならば」
・『響け!ユーフォニアム3』 第12話「さいごのソリスト」
・『ダンダダン』 第7話「優しい世界へ」
・『ONE PIECE FAN LETTER』
※順不同

 2024年も国内・国外の多彩なアニメーション映画が公開され、それだけでベスト10のリストが埋まってしまいそうなので、昨年同様TVシリーズの印象的だったエピソードを選出する形にした。WEB上でアニメファンが行っている年末の恒例企画「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」と同じ趣向だ。なお順位は決めておらず、順不同なので誤解なきよう。

 まず演出に痺れた4作品。

『〈小市民シリーズ〉』WEB次回予告 第10話「スイート・メモリー(後編)」

 『〈小市民〉シリーズ』第10話は喫茶店での対話のシーンが中心。限られたカメラポジションとイメージシーンの組み合わせで高い緊張感を保って展開し、目が離せなかった。

 『義妹生活』もフィックス中心、かつ室内はいつも同じカメラ位置で展開することで、独自の作品世界を作った。それが第12話で主人公とヒロインがついに抱き合う瞬間に、カメラがイマジナリーラインを越えて「抱きつく/抱きとめる」の関係性を瞬時に反転させて、ふたりの思いを見事に視覚化していた。

アニメは“演出面”が評価される時代に? 『マケイン』『義妹生活』に感じるリアリティ

2024年の夏アニメは、ライトノベル原作のアニメが高い人気を獲得した。国内で特に話題となったのは、『【推しの子】』第2期を中心に…

 『負けヒロインが多すぎる!』は「基本的にキャラが逆光」という基本設計が、キャラクターたちの立ち位置をうまく視覚化していた。旧校舎の階段という日陰の空間がよくでてくるが、第4話は屋上が出てきて、いつも逆光のふたりがカメラの切り返しで珍しく順光になるシーンが作られ、それがドラマとかっちり噛み合って印象的だった。

 『僕の心のヤバイやつ』(第2期)は、ラブストーリーが視線の物語であることへの徹底がドラマを盛り上げていた。karte18は卒業式での出来事を中心に、最後にメインのふたりが正面顔の切り返しで視線を合わせるまでを丁寧に描いて盛り上げていた。

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