「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『レ・ミゼラブル』
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ちょび髭男爵こと石井が『レ・ミゼラブル』をプッシュします。
『レ・ミゼラブル』
フランス映画でこのタイトルとなれば、「また映画化?」と思うことがほとんどかと思います。が、本作はヴィクトル・ユーゴーの小説を映画化したものではなく、歌い出すジャン・ヴァルジャンが出てくるわけでもありません。タイトルの意味の通り、「悲惨な人々」「哀れな人々」が描かれる“いま”の物語になっています。
舞台はパリ郊外の治安がいいとは言えないエリアであり、小説『レ・ミゼラブル』にも登場するモンフェルメイユ。転勤でやってきた警官・ステファンが、ベテラン警官コンビのクリスとワンダとともに街をパトロールし、ギャングや街の少年たちとのいざこざの中で、“最悪”の自体に発展していき……というのが本作のおおまかなあらすじです。
主観ショットを交えながら、ちょいワル警官たちが街の悪を摘み取っていく実録もの。始まって数分は、デヴィッド・エアー監督作『エンド・オブ・ウォッチ』のフランス版?ぐらいに思っていたのですが、時間が進むごとに様相は一変。ちょいワルどころか、警官として以前に人間としてどうかという行為をクリスとワンダは重ねていきます。
人種差別は当たり前、恫喝も住民相手に平気で行う。観客は異動してきたステファンと同じ目線で、「こいつらおかしい!と思うこと間違いなしです。悪徳警官ものといえば、日本映画でも『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』などが記憶に新しいですが、それらの作品にあったようなフィクションとしての“ポップさ”は一切ありません。だからこそ、彼らの暴力が目に見えて痛く、同じ場所に居合わせたような心境にどんどんなっていきます。
実録ものとして前述の『エンド・オブ・ウォッチ』とも決定的に違うのも、彼らにとっての“当たり前”を“異常”と感じるステファンの視点があるところ。彼の存在を通して、観客も映画の中により誘われていくのです。