北村匠海ほど“闇堕ち”が似合う俳優はいない 『悪い夏』佐々木守に惹かれる理由

北村匠海ほど“闇堕ち”が似合う俳優はいない

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、小学6年生の頃に『東京喰種トーキョーグール』滝澤政道に出会い、闇堕ち展開の可能性に目覚めた佐藤が映画『悪い夏』をプッシュします。

『悪い夏』

 本作で主演を務める北村匠海の演技には、何よりも「闇堕ち」の魅力が凝縮されている。特に注目したいのは、その“目”だ。あの深く沈んだハイライトの死んだ瞳は、ただの演技では表現できない何かが宿っている。演じるというよりも、まるで最初から闇を体現しているかのように、その役に染まっていくのだ。『悪い夏』は、そんな北村匠海の圧倒的な“闇堕ち美少年”ぶりを堪能できる一作となっている。

 物語は、市役所の生活福祉課に勤める佐々木守(北村匠海)が、同僚の宮田(伊藤万理華)から相談を受け、職場の先輩・高野(毎熊克哉)が生活保護受給者の女性に肉体関係を強要しているという疑惑を持ち始めるところから始まる。

 真面目で気弱な佐々木は、正義感に燃える宮田の頼みを断ることができず、その女性、育児放棄寸前のシングルマザー・愛美(河合優実)のもとを訪ねる。愛美は高野との関係を否定するが、実は裏社会の住人・金本(窪田正孝)、その愛人の莉華(箭内夢菜)、手下の山田(竹原ピストル)と共に、ある犯罪計画の片棒を担ごうとしていた。そうとは知らず、徐々に愛美に惹かれてゆく佐々木。ふとしたきっかけで万引きを繰り返すようになってしまった生活困窮者・佳澄(木南晴夏)らを巻き込み、佐々木にとって悪夢のようなひと夏が始まろうとしていた……。 

 そんな本作は、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し、累計18万部以上を売り上げた染井為人の同名小説を原作にしている。すでに広く知られているが、2024年11月に公開された横浜流星主演『正体』の原作者でもある。中でも筆者が特にお気に入りなのは『滅茶苦茶』なのだが、染井の全ての作品に共通しているのは、「この結末、どう収束させるんだろう?」と読者をハラハラさせながら引き込んでいく点。特に、登場人物の思惑が見えず、何を考えているのか、どこへ向かっているのかが全く読めない感覚を言語化するのが天才的で、『悪い夏』における佐々木守は、まさにその典型的なキャラクターと言える。

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