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ヴァネロペとラルフが象徴する「和解と別離」 『シュガー・ラッシュ2』が描く現実のほろ苦さ

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 プログラムされた「悪役」という役割に疑問を感じているラルフと、プログラムに不具合があるせいで、みんなから仲間外れにされているレーサー、ヴァネロペ。そんなはみ出し者のコンビが、昔ながらのゲームセンターを舞台に大活躍する前作『シュガー・ラッシュ』から6年。現実世界と同じ時間を経た続編『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、大きな広がりを得て帰ってきた傑作である。監督は引き続き、『ズートピア』や『シンプソンズ』シリーズで知られるリッチ・ムーアとフィル・ジョンストンが務める。

 本作では、箱庭的なゲームセンターからオンライン空間に舞台を移し、「志の異なるラルフとヴァネロペがどのように歩んでいくのか?」というテーマで2人を描く。毎日が繰り返しの生活に満足しているラルフ。いっぽうで、慣れた暮らしに退屈し、スリルと冒険を求めてもいるヴァネロペ。その歩みの違いが、やがて大事件を巻き起こす。

 本作においてまず素晴らしいのが、オンライン空間の描き方である。80、90年代の懐古的なモチーフから作り上げられた前作は、アーケードゲームへの愛情たっぷりに描かれていたが、本作からは、作り手のインターネット愛がひしひしと伝わってくる。

 AmazonやGoogle、eBayといったWebサービスをはじめ、Facebook、Tumblr、Pinterestなど、数多のSNSが巨大なタワーを形づくり、ひとつひとつを見定める暇もないままに、次々とアイコンが写っては消えてゆく。Twitterの鳥が群れをなして飛ぶ。ユーザーがその間を浮遊し、ユーザーのまわりには広告が飛び交う。未来都市のデフォルメを施されたオンライン空間は、まさしく情報の洪水だ。カメラがほんの少し移動するだけで、ショーウィンドウをわたり歩くような陶酔を生む。

 初めてネットに接続し、あらゆるサービスを享受したときの高揚感を、ここまで完璧にとらえた映像は他にないだろう。情報から情報へ飛びうつるスピード感、新たな仲間と話す楽しみ、どこへだっていけるという万能感……圧倒的な迫力のCGは、これ以上を想像できないほどのクオリティに達している。

 また、この映画について考えるうえで、決して外せないのはフェミニズムである。歴代のプリンセスたちがわいわいと戯れる、反則技のようなトレーラーを目にした人も多いだろう。あのシーンはまず、ヴァネロペという不審者に遭遇したプリンセスたちが、警備を呼ぶのではなく、自衛を試みたからこそ生まれた点に、ディズニーの姿勢を垣間見ることができる。そしてプリンセスたちの、「大きくて力強い男性に助けられてるって思われてる?」「ならあなたは本当のプリンセスね!」という痛烈なセリフ!

 本作は、時代に合わせて価値観の更新を繰り返してきたディズニー・フェミニズムの、新たな一歩として記憶されるはずだ。主人公のヴァネロペも、安定した暮らしよりもスリルを求め、男性に依存することのない主体性を備えた現代的なプリンセスとして、なかなかうまく馴染んでいる。

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