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“ジェリコの壁”は壊せるのか? 『あなたには帰る家がある』が描いた男女の本音

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 『あなたには帰る家がある』(TBS系)が最終回を迎えた。全てを終えて、総じてこのドラマは口には出せない男と女の本音合戦であり、そのどうにも越えられない壁とどう向き合うかの物語だったのだと感じた。そしてその男女それぞれの本音を体現したのが、「家」にこだわる2人の男女、中谷美紀演じる佐藤真弓とユースケ・サンタマリア演じる茄子田太郎だった。2人が作った、男と女それぞれの「理想の家」で暮らすことに苦痛を感じ、帰りたくないと思い、つかの間求め合ってしまったそれぞれのパートナーが、玉木宏演じる佐藤秀明と木村多江演じる茄子田綾子だったのだ。

 ドラマ終盤に「ジェリコの壁」の話が出てきた。フランク・キャプラ監督、クラーク・ゲイブル主演の映画『或る夜の出来事』に登場する、旅先のハプニングで1つの部屋に泊まることになった、会ったばかりの男女が、互いのプライバシーを侵さないように、ベッドとベッドの間に毛布で作った“壁”のことである。彼らは何度もハプニングに見舞われ、何日も夜をともにし、次第に心を通わせる。そして最後の晩、女は壁を越えて男にすがる。しかし、男は彼女を愛していたのにそれを許さず、ちゃんと求婚しようと金策のために出ていったために、女の誤解を生み、2人はすれ違ってしまう。まあ、その後にちゃんとミラクルなハッピーエンドが待っているわけだが、この映画の醍醐味は壁を巡る攻防だろう。

 真弓と秀明がこの「ジェリコの壁」について語るのは2つの意味がある。それは、居酒屋で「この距離がいい」からこのままでと言う真弓に、「何十年待てばいい?」と問いかける秀明との関係性の間にある、なかなか取っ払えそうにない壁のことである。そして、恋人同士だった頃のようにカフェで映画『或る夜の出来事』について語り合う彼らの「プロポーズの時にかっこつけるから」「男心全然わかってない」という会話のように、この映画における「女と男の間の壁」を示している。さらに言えば、彼らが恋人同士だった頃に語り合い、真弓の好きな映画として何度も登場する『ローマの休日』と、『或る夜の出来事』は、どちらも新聞記者と家を飛び出した令嬢の恋物語という構造そのものがよく似た映画だ。だが真弓が共感するのは『ローマの休日』で、秀明が共感するのが『或る夜の出来事』というのも、この「男女の違いあるある」を象徴的に示したものだと言える。

 『或る夜の出来事』は実は最終話に突然出てきたものではない。第10話で綾子の実家に行くために、秀明と太郎が“ロードムービー”を、真弓と綾子が“路線バスの旅”を行う珍道中において、秀明が男2人の道中を『俺たちに明日はない』と男性版『テルマ&ルイーズ』に例えるが、女2人の道中は何の映画にも例えられない。だが、カバンをバスでなくしてしまう真弓と、滑稽なヒッチハイクのやりとりは、間違いなく女同士の『或る夜の出来事』だろう。男と女の壁も簡単には越えられないが、この全く正反対なタイプの女同士の壁も簡単には越えられない。

 また、このドラマは「家」の話だった。第6話で綾子に乗り込まれ、太郎と秀明によって家具が壊され、彼女の家が壊されていくことに愕然とする真弓と、第9話で太郎が、家の壁に拳をぶつける息子・慎吾(萩原利久)を見て「おい、俺の家に何してんだ!」と叫ぶのは同じだ。彼らは何より自分たちの理想の家屋が壊されることを許さない。

      

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