池松壮亮、2018年は変革の年に? 『宮本から君へ』などで見せる“若者たちの代弁者”としての姿
「1本1本こだわってあきらめずにやっていきたいと思っています」ーー「第9回TAMA映画賞」最優秀男優賞受賞時のコメント(第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM プログラムレポート 第9回TAMA映画賞授賞式)が記憶に新しい池松壮亮の主演ドラマ、『宮本から君へ』(テレビ東京系)の放送が開始された。今作での池松は、新米サラリーマンとして恋に仕事に奮闘し、必死に自分の生き方を見つけていく青年を演じているが、多くの作品での彼の存在は、言わば同世代の若者たちの代弁者的な立ち位置にある。
池松が2003年の『ラスト サムライ』で映画デビューを果たしたことを知る人は多いだろう。子役時代からキャリアを積み、それまで両立させてきた学業を終えた2013年からは役者の道一本に専念し、話題作に次々と出演。とくに、現代を生きる若者を主体的に描いた作品に多く主演し、その存在感を放ち続けている。10本もの出演作が公開された2016年は『無伴奏』や『セトウツミ』などで、単一のイメージに収まらない演技の幅を見せ、同世代の俳優らとともに作品の顔となる器量の大きさを証明した。一方、『海よりもまだ深く』では探偵を演じる阿部寛の、『永い言い訳』では作家を演じる本木雅弘の脇に立ち、少しずるくて情けない彼ら大人たちを、どこか冷めた態度ながらも支える姿を見せた。いずれの立場にあっても彼が演じるのは、若者を代表するような役どころだと言えるだろう。
今作で彼が演じる宮本浩は、愛想笑いもうまくできない、文具メーカーの営業マン。社会に出てから自信を失くし、「でっかいことしたいんだよちくしょお!」と口にはしつつも、小さな一歩が踏み出せないでいる。これまでにも池松は、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(2013)や『愛の渦』(2014)、『ぼくたちの家族』(2014)などで、憂いのある“イマドキ”な青年を演じ、多くの共感を得てきたが、この宮本もタイプこそ違うが“イマドキ”な青年の1人だ。宮本が自分のことのように思えて恥ずかしくなるのだが、彼の熱く生きる姿は観る者の背中を押してくれそうだ。
冒頭に記した池松の言葉は、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』での好演を讃える場でのものである。彼が“代弁者”たり得る理由に触れられる、そんな最良の作品だ。将来への不安や今を生きることの息苦しさ、それらに抗いながら、そして受け入れながら、現代の東京で生きる等身大の若者を演じている。きっと多くの人々が、彼の姿に自分自身を重ねてしまったのではないだろうか。昨年公開された出演作はこの1本のみでありながら、池松なくして2017年の映画界は語れないほどに、この作品で強い印象を残したのだ。