柄本佑×前田敦子が語る、役者として表舞台に立つこと 『素敵なダイナマイトスキャンダル』対談
昭和のアンダーグラウンドカルチャーを牽引した稀代の雑誌編集長・末井昭の自伝的エッセイ『素敵なダイナマイトスキャンダル』が、『ローリング』『南瓜とマヨネーズ』の冨永昌敬監督によって映画化された。本作では、幼いときに実母がダイナマイト心中した、末井昭の波瀾万丈な半生を描き出す。リアルサウンド映画部では、主人公・末井役を演じた柄本佑と、その妻・牧子役を演じた前田敦子にインタビューを行い、作品の見どころや裏話、俳優として表舞台に立つことなどについて話を訊いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
前田敦子「佑さんはそのままで昭和っぽい」
ーー末井昭さんの自伝的エッセイを映画化した本作ですが、あの時代特有の熱量のようなものが画面から伝わってくる作品でした。
柄本:僕にとっては、末井さんという身体を通して、60年代から80年代くらいまでの時代を映しているというよりも、末井さんの人生そのものを撮っていっている映画だと感じていました。この手の実在する人物の姿を描いた作品は、往々にして「こういう人がいました」みたいな映画になってしまうことも多い。ただ、この映画は末井さんが体験した実際のエピソードをやっていってるだけですけれど、あくまでそれを基にしたフィクションだなと。
前田:私としては、すごくコミカルだし、明るいし、普通に面白いと言いたいです。細かいところで言うと、出てくる男の人たちがほとんど眼鏡をかけている。どれだけ眼鏡キャラがいるんだ!っていう(笑)。そういう楽しみ方もあるなと思いました。
ーー初共演となるお互いの印象はいかがでした?
柄本:監督の「僕のあっちゃん」、「私のあっちゃん」という妄想に、彼女がグニャグニャと形を変えて反応する。女優・前田敦子さんにはそんな魅力があるんじゃないかと思います。
前田:私は佑さんにいいキャッチフレーズをつけてもらったので。
柄本:「色気のある真っ白いキャンバス」ね。いいキャッチフレーズだよね?
前田:うん、うれしいです。さすがに自分からは言えないですけど(笑)。
ーー前田さんは『苦役列車』、柄本さんは『人間失格』など、過去に昭和が舞台の作品にそれぞれ出演していますが、本作で改めて2人がちょっとレトロな感じの世界観が似合う印象を受けました。
前田:佑さんはそのままで昭和っぽいですからね。
柄本:すごーく失礼なことを言ってるね。気がついてるかい?
前田:昭和生まれですよね? 昭和って長いんだっけ?
柄本:俺は昭和61年生まれ、で昭和は64年までだから。お前…ばっかだな~(笑)。
前田:そうなんです(笑)。
柄本:(弟の柄本)時生が平成元年なのね。だから数えやすいのよ。俺が61年でしょ。62年、63年、そして平成元年にうちの弟が生まれているから。
前田:へー。
柄本:興味がないんだな。本当にそういうところあるよね。末井さんみたい。聞いておいてすぐ飽きる。やっておいてすぐ飽きる。
前田:じゃあ、私が末井さんやろうかな(笑)。
柄本:女版・末井昭。ヤバいだろうね。面白そう。
ーー実際に末井さんはどんな方なんでしょう?
前田:末井さんとは舞台挨拶でお会いしたときに、つかみどころのない面白い方だったので、作品を通して感じていた末井さんの印象と合致しました。本当に自然とそこにいらしていて、なんだか不思議な存在感でした。
柄本:末井さんの馴染み方、半端ないからね。末井さんは現場にも6日間いらっしゃってたし、稿が変わる度に台本を読まれてた。この作品には我々よりずっと前から関わっていて、現場でも時代考証してくださったり。取材などもたくさんされてきた方なので、馴染み方が半端なかったんだと思う。“現場に来た原作者”という立ち居振る舞いではなかったですね。
前田:たしかにそうでした。厳しさもゼロで、妖精みたいなんです(笑)。
柄本:本当にその通りで、なにかが漂っている方なんです。だから本当につかみどころがないんですよね。素敵な方です。作品自体は、試写で2回も観てると言ってました。末井さん自身、この作品の現場をとても楽しんでいる印象でした。