『超かぐや姫!』待望のスピンオフ『超かぐやメシ!』で広がる世界 次に挑むのはどんなメシ?

「このお話にはまだ続きがある」。そう言って酒寄彩葉が本当のハッピーエンドに向かって動き出したNetflix映画『超かぐや姫!』は、かぐやの”復活”へとたどり着いた。十分以上の感動を与えてくれたが、その先をもっと見たいというファンの気持ちに応えるように、1本の漫画が始まった。『超かぐやメシ!』だ。
山下清吾監督の『超かぐや姫!』を制作したスタジオコロリドやスタジオクロマトをグループに持つアニメプロデュース会社のツインエンジンが、WEBマンガレーベル「ビビビコミック」を立ち上げた。31作品が一挙公開された中で注目を集めたのが、山下清吾/フジヤマルリ原作でテルヤ作画の『超かぐやメシ!』という『超かぐや姫!』を元にしたスピンオフコミックだ。
タイトルから分かるように「飯」がテーマになったこの作品。『超かぐや姫!』というアニメのエンディングで、バイオロイドに月の人間であるかぐやの精神体(魂)を移すことで、前に生身で彩葉と暮らしていた時のように、リアルの世界を動き回れるようになったかぐやが、これも前と同じように、何かを食べて騒ぐ姿に迫ろうとしている。

リアルな雑誌として発売された「創刊記念号」にも掲載された第0話では、バイオロイドの体で目覚めたかぐやは、ケーキを口にして「甘い」と言って、味覚が備わっていることを見せている。ここで重要なのが、いっしょにケーキを食べた彩葉の旧友の芦花と真実が、「おいしい」と言っていること。続けて彩葉が、「かぐやはまだ『甘い』って味しか認識していないからな~」と言っているところに、味でありおいしさというものを人工的に再現する大変さが感じ取れる。
『超かぐや姫!』でも、終盤に”復活”をとげたかぐや真っ先に思い出のパンケーキを食べたがるが、彩葉に「味覚はもうちょいお待ちあれ」と言われて止められる。どうして味覚の再現が難しいのかを簡単に説明するのは難しいが、目でとらえた光を脳が映像として認識することや、皮膚などに触れられた感覚を脳がそう認識することのように、味でありおいしさというものを、脳に認識させることに何か困難さがあるのかもしれない。
そうした課題を、どうやら彩葉はクリアしたようだ。続く第1話でかぐやは彩葉は連れだって牛丼屋を訪ね、「つゆだく半熟卵紅しょうが大盛り」を頼んで最初の1口を食べて言う。「うま~~~」。甘さだけでも辛さだけでもないおいしさをしっかりと感じ取れるようになった現れだとしたら、彩葉が工学や神経科学や心理学などをどのように突き詰め、かぐやがおいしさを認識できるようにしたのかが気になる。
もしかしたら山下監督はそこまで設定しているのかもしれない。同時に、味覚というものの存在が、生きる人間にとって欠かせないものだということを伝えようとしているのかもしれない。例えば、士郎正宗の漫画を原作にしつつ、草薙素子がこれから公安9課を立ち上げようとしている時期を描いたアニメシリーズの第3話『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』で、素子が恋人のホセから差し出された食べ物を口にして、「おいしい」と言う場面がわざわざ描かれる。
素子は普段は味覚にメモリーを回さず、ただ肉体を維持するためのエネルギーとして飲食をしていたようだが、ホセに連れて行かれた全身義体の老人たちが集うパーティーの場では、味覚を楽しむことが改めて生きる喜びのように扱われていた。生まれてすぐに全身義体となった素子が、味の必要性をどこまで理解したかは分からないが、人間の嗜みとして食べること、そしておいしさを味わうことは決して止められないものだと感じさせた。
『超かぐや姫!』で味覚についての指摘を行い、そして『超かぐやメシ!』でかぐやがおいしさを感じ取れるようにしたのも、そこにこそハッピーがあるのだと伝えたかったからなのかもしれない。
結果、かぐやは牛丼をおいしいと感じ、戻ってきた彩葉との日々を改めて存分に楽しんでいけるようになれた。その意味で、第0話と第1話は、単に食いしん坊なかぐやという少女(8000歳)がいろいろ食べていく様子を追いかけるグルメ漫画の範囲を超えて、食と味と人間性について描こうとした、科学的で哲学的なエピソードと言えそうだ。
これが第2話以降も続くかは分からない。ただひたすらにかぐやが食べまくっていく様子を描いていくのかもしれない。まずはパンケーキであり、『超かぐや姫!』の作中で使われた楽曲「ray」のMVで、2人が訪れた、廻らない寿司屋への再訪であったり、もっともっといろいろな食にチャレンジしていったりする話になるのかもしれない。そうした食を巡るエピソードを通して、かぐやと彩葉、そしてかぐやの中にいるヤチヨの間の愛情がぐんぐんと深まっていく展開に、ドキドキさせてくれるのかもしれない。
それはそれで楽しいし嬉しいが、一方で、せっかく世に出た最先端のバイオロイドがいったいどれほどのものなのかを、見せてくれるような展開があったらと思わなくもない。映画では描かれていない”それから”のエピソードが、せっかくこうして世に出たのだから、続いていく2人の道の行方に、時代の風景も絡めて描いてくれたら、未来に希望を抱けるだろう。それが、アニメの続編に繋がるのならなお歓迎だ。
また、今回はこうした”未来編”が漫画になったが、ヤチヨが過ごした8000年についても何か読んでみたいという気がある。本編では淡々と描かれていった多くの出会いと別れのひとつひとつにあっただろう感動の物語にも触れられるのなら触れてみたい。芦花と真実のエピソード、そしてブラックオニキスの面々のエピソードも読んでみたい。
『超かぐや姫!』という大勢の支持を集めた太い幹があるだけに、そうした展開も可能だろう。そのための媒体も立ち上がった。あとは誰かが何かを描くだけだ。
■関連情報
『ビビビコミック』
価格:935円(税込み) (本体850円+税10%)
付録:『超かぐや姫!』クリアカード
発売日:2026年8月7日(金)
購入場所:全国の書店にて販売
『超かぐやメシ!』
漫画:テルヤ(https://x.com/teruya13)
原作:スタジオクロマト・スタジオコロリド
ジャンル:少年マンガ(日常×グルメ)
ここから読む:https://bibibi-comic.com/series/41de76fc8df5f























