【漫画】初対面の男が「尿をください」? “ちょっと変”な男女のラブコメ『運こた』にじわじわキュン

累計75万部突破の人気作で、江戸時代の遊郭を描く『あおのたつき』(マンガボックス)連載中の安達智による、現代を舞台にしたラブコメディ『運命の人、絶対に炬燵の布団みたいなアウター着てない』(小学館/「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載)第1巻が発売された。主人公は「ドラマみたいな理想の恋」を夢見る会社員・佐藤はるか。そんな彼女が出会うのが、初対面で「尿の採取をさせてほしい」と言ってくるデリカシーに欠けた理系大学院生・帯刀武だ。前作から大きく作風を変えた本作は、どのようにして生まれたのか。作品に込めた思いやキャラクターへの向き合い方、そして今後の展開について、安達に話を聞いた。(皆川潤喜)
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――本作着想のきっかけについて教えてください。
安達智(以下、安達):若い人に恋をしてもらいたいな、と思ったのがきっかけのひとつです。仕事で関わる若い世代の人たちが、気になる人へのメールの返信ひとつに何日もかけて悩んでいる姿を見て、今の若者にとって恋愛はとても難しいタスクになってしまっていると思いました。「そんな風にしてたら、仕事してるだけでおじいちゃんになって、すぐ人生も終わっちゃってもったいないんじゃない? もっと恋愛だったり、いろんな事に積極的になってもいいんじゃない?」と感じたんです。自分の恋愛が楽しかったからというのもあるんですけど、そんな想いを伝えたいなと思ったのが始まりです。
あと、私には中学生と高校生の娘がいるのですが、彼女たちがいろんなエンタメについてすごく楽しそうに話しているのが羨ましかったんです。『あおのたつき』はずっと暗い展開が続いているので、次は娘たちが楽しく語れるような明るいエンタメの話を描きたいなとも思っていたんです。
そんな経緯もあって、新しい作品を模索していろんな編集さんとお話ししていたのですが、本作の担当さんがまさに帯刀っぽいところがあって、喋っているうちに帯刀というキャラクターを掘るのが面白くなってきたんです。魅力に溢れているのにあまり自分からアピールしないような人たちが、恋愛において条件面だけで除外されてしまうのはもったいない。一見冴えないと思われている人を違う目で見て、「この人にもこんな一面があるのかな」と想像できれば、人間関係にちょっと深みが出るし、単純にそういう新しい一面の発見って楽しいじゃないですか。
マッチングアプリの数値では測れない魅力みたいなものを描けたらいいなと思いながら作っていきました。学校のテストの数字には表れにくい力を「非認知能力」と呼んだりしますが、私たちが「その人」を見るときにも、年収や学歴のようなわかりやすい数字だけではなく、思いやりや誠実さ、その人に流れている時間の速さのような、継続的に関わらないと見えてこない魅力がそれぞれにあると思います。
――作中のセリフで「誰もが、誰かから見たら少しは変」とあるように、本作には「デリカシーとはなんだ」といったテーマ性があるように感じました。
安達:まず「誰でも、どんな人がいてもいい」という思いが根本にあります。読者さんの反応を見ていると、はるかはあまり好かれていない印象もあるのですが(笑)、はるかみたいな子もいていいし、帯刀みたいな人がいてもいい。人を傷つけるのはいけないけれど、誰だって失敗はするじゃないですか。人に対する許容を持つことは、自分自身も生きやすくなるということだと思うので、そういうメッセージが伝わればいいなと思っています。
――はるかはあまり読者に好かれていないかもとおっしゃいましたが、帯刀も初対面の人に「尿を採取させてくれ」と言ってしまう“ノンデリ”な人物です。キャラクター造形において、読者が不快にならないように意識している部分はありますか?
安達:尿検査のくだりでの帯刀のデリカシーのなさや、はるかの妄想が始まるシーンなどは、「これはこの人の困った衝動です」という体裁で描く大前提は意識しています。作品の中で肯定してはいけない部分だなと。
ただ先ほどの話と少し重複しますが、誰でも悪気がなく言っちゃうことってありますよね。私自身、主人公のはるかみたいなところがあり、実際、私は夫と出会ったのが作中と同じようなシチュエーションだったのですが、年上が好きだったこともあり出会った時に思いっきり「なんだ学生さんか」って言っちゃったことがあって(笑)。後から「悪いこと言っちゃったな」と反省して謝罪もしましたし、もちろんだからといって何を言っても良いわけではないですが、人間って完璧じゃないからこそ出てしまう言動や失敗ってあると思うんです。
――連載している「週刊ビッグコミックスピリッツ」は青年誌ですが、女性が主人公のラブコメである本作との相性についてはどう感じていますか。
安達:最初は「女の子に読んでもらいたい作品だけど青年誌でいいのかな?」と思ったりもしました(笑)。でも、『ありす、宇宙までも』や『胚培養士ミズイロ』など女性主人公の作品もありますし、担当さんからも「『めぞん一刻』や『東京ラブストーリー』もあって、昔からラブコメの土壌がある雑誌だから合っている」と言ってもらえています。
男性読者への意識という点では、担当さんが男性で良かったですね。私一人だとどんどん暴走して、はるかの被害者意識を強めすぎて読者に引かれてしまいそうなので(笑)、バランスを取ってもらっています。帯刀くんみたいな男性が読んでも楽しめる作品にしたいですね。
――“ノンデリ”の帯刀の魅力にいろんな人が気づくというのは、先ほどの「一見冴えないと思われている人でも、違う一面があるかも」という話にも通じますね。
安達:はい。1巻は、はるかと帯刀の二人が中心でしたが、これから新しいキャラクターも登場してラブコメの「ラブ」の部分が増えてくる予定です。最近はだいぶ慣れてきて、連載ペースももう少し上げられると思うので、はるかに少しイラッとした人もちょっと我慢して読み進めてもらえたら良いなって思います。あとこれは言っておきたいのですが、もう何話かしたら「運命の人」というキーワードの持つ意味もひっくり返りますので、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。
【漫画】『運命の人、絶対に炬燵の布団みたいなアウター着てない』を読む
■書誌情報
『運命の人、絶対に炬燵の布団みたいなアウター着てない』1巻
著者:安達智
定価:770円(税込)
発売日:2026年8月20日
出版社:小学館






















