映画『キングダム 魂の決戦』原作からカットされた重要な要素とは? 5人のキャラと設定の改変を考察
山﨑賢人主演の映画『キングダム 魂の決戦』が7月17日に公開され、公開4日間で興行収入20億円を突破した。オープニング成績は2026年公開の実写映画で首位となり、シリーズの勢いは変わらず続いている。本作では、原作屈指の人気エピソード「合従軍編」が描かれた一方、山陽編の省略に伴い、一部の人物やエピソードが再構成された。なかでも、原作ファンの間で「見たかった」と話題になったキャラクターや、映画版で簡略化された重要な設定を振り返っていきたい。
未登場のキャラクターでは、斉王・王建王も印象的な存在だ。原作では蛇を口にくわえた異様な風貌と独特の口調で読者に強烈な印象を残し、蔡沢が斉を合従軍から離脱させるため繰り広げた外交戦は大きな見せ場となるはずだった。笹野高史が演じた蔡沢の再現度が高かっただけに、このシーンが映画で描かれなかった点を惜しむ声も少なくない。
桓騎軍の千人将・オギコも姿を見せなかった人物の一人である。原作では、三方向に分かれた三つ編みの髪、鼻輪、刺青、そして常に上裸という強烈なビジュアルが特徴。言動もどこか間の抜けた雰囲気ながら、不思議な存在感を放つ人気キャラクターだ。映画のエンドロールには「イジコ」という役名が確認できるものの、原作そのままのオギコは登場しなかった。桓騎軍を象徴する人物だけに、続編であの「今日のオギコはかーなりきてるっぽい!ぽいよーー!!」という名台詞が再現されることを期待したい。
一ノ瀬ワタルがツバとよだれをまき散らす怪演を見せた楚の将軍・臨武君。騰にあっさり倒され“雑魚キャラ”になってしまったが、原作では軍長・同金を一撃で倒すなどまぎれもない猛者だった。同じく、軍長の鱗坊の登場もなく、カニ頭の臨武君に放つ「どうしてもそいつに聞いておきたいことがある。常軌を逸したその髪型に込められし気高い主張は何なのかとなァ」との最高すぎる挑発が見られなかった。その鱗坊を一矢で射抜いた白麗(三山凌輝)の弓の恐ろしさが十分に伝わらなかったほか、臨武君の妻が白麗の実姉という設定も省略されたが、尺を考えれば致し方ない変更と言えるだろう。
一方で、山田裕貴演じる万極の背景を語るうえで欠かせない「長平の戦い」は、映画でもしっかりと触れられている。原作では、秦の旧六大将軍筆頭・白起が投降した四十万人もの趙兵を生き埋めにした惨劇と、その傷跡が趙の人々に深く刻まれていることが描かれる。万極が秦へ異様なまでの憎悪を抱く理由もこの出来事にある。映画では万極自身の口から長平の惨状が語られ、白起が残した悲劇と万極の狂気が十分に伝わる内容となっていた。ただ、原作でギョロ目の悪人顔に描かれている白起本人の姿は描かれず、秦が背負う「過去の罪の象徴」としての役割は、控えめな描写に留まっている。
また、キャラだけでなく「設定」にも省略や改変が見られた。名のある将軍が唐突に集められ、開戦となった函谷関の攻防だが、原作では、「百戦百敗」の盤面から昌平君(玉木宏)と昌文君(髙嶋政宏)が不眠不休で模擬戦を繰り返し、どうにか「秦軍二十勝、合従軍八十勝」の戦略をひねり出す。絶望的な戦況だからこそ、昌平君が導き出した策の価値が際立つ構成となっていた。
飛信隊の編成にも映画独自の調整が加えられている。山陽編を省略したことで、楚水に代わり松佐(猪塚健太)が副長ポジションに。しかもイケメンすぎる配役だったことで、コアな作品ファンですら「あれは誰?」と戸惑ったようだ。他にも、相手の剣の衝撃を受け流す蒙恬(志尊淳)の神業や、信(山﨑)と河了貂(橋本環奈)の“ハプニングキス”の省略もそれぞれのキャラファンにとっては残念だったかもしれない。
ともあれ、こうした変更は限られた上映時間のなかで合従軍の圧倒的な規模と函谷関攻防戦に焦点を絞るためには当然の判断。人物や背景を整理したことで物語のテンポは保たれ、戦いの緊迫感も最後まで途切れなかった。映画は合従軍との戦いの序章で幕を閉じており、今後の続編では今回描かれなかった人物や設定がどのように補完されるのかにも注目したい。





















