さたぱんPに聞く『初音ミク NT 徹底攻略ガイドブック』活用法「中級者~上級者にとっても新たな発見がある」

さたぱんPに聞く『初音ミク NT』活用法

 従来のVOCALOIDとは異なる、独自の歌声合成エンジンを採用したシリーズとして2020年に誕生した「初音ミク NT」。2025年にVer.2が公開され、クリプトン・フューチャー・メディアが開発したVer.2用のエンジンによって、より豊かな歌声表現や効率的な制作が可能になった。そんな初音ミク NTでの創作をガイドする書籍『クリプトン・フューチャー・メディア公認 初音ミク NT 徹底攻略ガイドブック』が刊行された。

 本書の執筆は、初音ミク関連本で知られる元クリプトン・フューチャー・メディアのサウンドクリエイター・山口真(Makou)氏が担当。初音ミク自体の説明や各種ソフトウェアのインストール方法といった基礎的な情報を皮切りに、初音ミク NTでの創作テクニックが詳細かつ初心者にも分かりやすくまとめられている。実際にボカロPとして活躍するクリエイターは、本書をどう読んだのだろう? 「ヤババイナ」や「シンギュラリラリ」など初音ミクの可能性を広げるようなヒット曲で知られるさたぱんP氏に本書の感想を聞いた。

さたぱんP

「最初から最後まで丁寧で分かりやすい説明をされていて、作曲をはじめようと思ったときや、はじめたてのときに読んだとしても、すごく理解しやすいように感じました。作曲自体のことも、もちろんミクちゃんの調声についてもとても分かりやすく書かれていて、ボカロ曲を作るためには本当におすすめできる本だと思います。

 たとえば、PART 1『歌わせてみよう』の29ページには『(DAWの)プロジェクト画面はコンサート会場』と書いてありますが、この一言はまさに、と思いました。『ミクちゃんがいて、その後ろにストリングス、ドラム、ベースなど色々な楽器がいるよ』ということが分かりやすくたとえられていて、初心者の方がいちから曲を作る際にも理解しやすい、非常にいいたとえだと思いました。他にも、PART 2『Piapro Studio NT2の使い方』の49ページ『ズームの中心点&マウスホイール・タイプの設定』のような細かい部分や、同じくPART 2の83ページにあるポルタメントのような本来ならなかなか理解しづらいことも咀嚼しやすい言葉で書かれていて、初心者の方にも非常にやさしく解説されています。

 同時に、私のようにミクを何度も使っている人に向けても、『なるほど。こういうところはこう使えばいいんだな』とアイディアをもらえる内容があるので、中級者~上級者にとっても新たな発見があるような、様々な読者層をカバーしている本だと思いました」

 初音ミク NTには歌声ライブラリー「初音ミク NT」に加え、ボーカルエディター「Piapro Studio NT2」やSteinberg社のDAWソフト「Cubase LE」、その他様々な音素材が同梱され、購入後すぐに初めての音楽制作に取り組むことができる。そうした超初心者にとっての心強いガイド役になる一方で、詳細で整理された情報で上級者をサポートする参考資料にもなる。文字通り「初音ミク NTの取り扱い説明書」とも言うべき一冊となっている。

「たとえば、PART 5の『目的別の調声&演出テクニック』では、「元気に歌わせる」「しっとりと歌わせる」「無機質に歌わせる」「ささやくように歌わせる」「こぶしを付けて歌わせる」など目的別に様々な調声の方法が解説されていますが、『こういうやり方もあるよな』と気づく部分もありました。普段から調声をしていると、意外に使っていない機能があったり、『こういうときはこれでいいだろう』と決まった方法を使ったりしがちです。その頭をひとつ柔らかくしてくれる、また別のエッセンスをもらえると感じました」

『クリプトン・フューチャー・メディア公認 初音ミク NT 徹底攻略ガイドブック』より

 普段の制作では「初音ミク V4X」などを使用しているため、まだ初音ミク NTを使った楽曲は発表していないというさたぱんP氏。では、同じ初音ミク関連の製品の中でも、「初音ミク NT」だからこその魅力というと、どんなことを感じるだろうか?

「私が普段楽曲制作で使用しているV4Xなどと比べると、プラグインとしてではなく、スタンドアローンでミクちゃん単体で使えるのはとても便利だと思います。ちょっとしたアイディア出しのときにも直接アプリを開いてパッと触ることができるのはNTの強みです。あとは、『Automatic Control』(Ver.2より実装された、AIによるピッチカーブ/ビブラートの自動付与、子音長の自動調整といった機能群の総称)ですよね。やはり、プロが行う調声のようなことがワンタッチで出来るのはかなり魅力的です。調声はこだわりだすと際限がなく、作業が止まってしまいがちな部分でもあるので、人によっては自動調声機能で出てきたものをそのまま使ってもいいでしょうし、一旦出してみたものを聴いてみて、『じゃあこうしよう』と新しいアイディアを考えるために使ってもいいかもしれません。

 一曲の中でトラックを分けて歌い方の調声を数クリックで行っていくこともできますよね。私も色々なジャンルの要素をひとつの曲に詰め込むことが多いタイプですが、そういった形で色々な調声のミクちゃんをスムーズに登場させることもしやすいように感じます。誰かと一緒に曲をつくるときに、『ミクちゃんでこういう調声をしてみました』と相手にパッと伝えられるのもとても助かります。また、他のシリーズでしか得られないミクちゃんの声があるのと同じように、NTでしか得られない声もあると言いますか。NTには音のなめらかさのようなものがありますし、初めから人間味のあるミクちゃんが出来上がるので、歌声に感情が乗せやすいかもしれません」

 『クリプトン・フューチャー・メディア公認 初音ミク NT 徹底攻略ガイドブック』には、より利便性を増し、様々な歌声を表現可能になった初音ミク NTの魅力や、その機能を最大限に使いこなすためのノウハウがまとめられている。ボカロ楽曲の制作に興味がある初心者の方から、現在の作曲作業をレベルアップさせるためのヒントがほしい方まで、それぞれの立場ごとに本書の活用法があるだろう。最後にさたぱんP氏に、誕生から20周年が見えてきた現在も愛され続ける初音ミクそのものの魅力を聞いた。

「それをお話するには最低3時間はいただかないと……! ただ言えるのは、キャラクターも歌声も魅力的だと思いますし、色々なボカロPさんがソフトウェアとして使うことで色んなミクちゃんが出来上がるのも面白い。多角的な魅力に言及できる存在だと思います。ミクちゃんの曲ってトラディショナルなものが多いと思うんですが、それで慣れ親しんできたミクちゃんの声を聴いて『ミクちゃんだな』と分かる人が多いというのも、他のボカロにはなかなかない魅力だと思います」

■書誌情報
『クリプトン・フューチャー・メディア公認 初音ミク NT 徹底攻略ガイドブック』
著者:山口 真
価格:3,520円
発売日:2026年2月20日
出版社:リットーミュージック

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