『ミナミの帝王』がついに幕! バブル崩壊、派遣切り、コロナ禍……時代と並走した「ゼニの記録」

1992年の連載開始から30年以上の長い歳月を積み重ねてきた『ミナミの帝王』が、ついにその歴史に幕を下ろすこととなった。1月16日発売の(日本文芸社)において、物語が最終回まで残りわずか4話であることが公式に発表されたのだ。
原作・天王寺大、作画・郷力也の黄金コンビによって生み出された本作は、大阪ミナミを舞台に、トイチ(10日で1割)という高利貸しを営む「ミナミの鬼」こと萬田銀次郎が、欲にまみれた人間たちや狡猾な悪党を鮮やかに裁いていく姿を描き続けてきた。それは単なる娯楽漫画の枠を大きく超え、日本社会の変遷を「銭」という視点から切り取った、バブル期から令和に至る壮大なクロニクルであったといえる。
主人公の萬田銀次郎は、派手なスーツに身を包み、鋭い眼光で債務者を圧倒しながらも、自らのルールを徹底して貫く男である。そのスタンスは連載当初から驚くほど揺らぐことがない。トイチという「裏金融」の法外な利息を課し、1円たりとも踏み倒しを許さない非情さを持つ一方で、驚異的な知略を武器に、社会的弱者を救い、真の悪党を地獄へ突き落とす。竹内力による実写版の強烈なインパクトも相まって、銀次郎はもはや日本のアンダーグラウンド・ヒーローとして伝説的なアイコンとなった。
特筆すべきは、銀次郎が丸暗記した六法全書を単なる知識としてではなく、問題解決の「武器」へと昇華させている点だ。複雑に入り組んだ権利関係を鮮やかに紐解き、法の死角から標的を追い詰めるその手腕は、もはや一流の経営コンサルタントの域に達している。
また、この作品がこれほど長く愛されてきた一番の理由は、常に世の中のトレンドを敏感にキャッチして、物語に取り入れてきたことにある。1990年代初頭のバブル崩壊後の混沌から始まり、豊田商事事件を彷彿とさせる巨額詐欺、商工ローンの社会問題化、そして現代の派遣切りやコロナ禍に端を発する経済困窮にいたるまで、その時々の日本が抱える歪みが物語の中に生々しく取り込まれてきた。サントリーの伊右衛門のヒットを彷彿とさせる「緑茶戦争」や、老舗温泉街を再生させるエピソードなどは、銀次郎のコンサルタントとしての能力が遺憾なく発揮された傑作である。また、近年ではライブ配信やSNSを巡るトラブル、仮想通貨にまつわる詐欺など、身近なニュースも扱い、社会が抱えるリアルな闇を突きつけてきた。読者は銀次郎の活躍を通して、日本で起きている“社会問題”の裏側をまるごと見渡すことができたのだ。
「人がゼニを操ったんやない。ゼニが人を操りよったんや」「いつの世もゼニは、借りた方が強いんでっせ」「儲け話には必ず棘(とげ)があるもんや」「法律ゆうんは弱いもんの味方やない、知っとるもんの味方するんや」――。銀次郎が放つこれらの言葉には、冷徹ながらも本質を突いた重みがある。欲に目がくらんだ人間が自滅し、無知ゆえに搾取される現実を突きつける台詞は、まさに「ゼニと人間」の業を記録し続けてきた本作の真骨頂といえる。
突然の完結発表に際し、ネット上では「あって当たり前だったマンガが終わるのが寂しい」と、一つの時代の終焉を惜しむ声が絶えない。「ゼニは天下の回りもん。せやけど、回し方を間違えたら命取りや」という銀次郎の教訓を胸に刻みつつ、最終回を見届けたい。












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