note、韓国最大手のデジタルプラットフォームと資本提携へ 今後の漫画コンテンツとIP戦略を読む

2025年11月5日、noteが韓国・NAVERと約20億円規模の資本業務提携を結んだ。NAVERはnoteの株式7.9%を取得し第2位株主になる。NAVERといえば、世界150カ国以上で展開するデジタルコミックプラットフォームを擁し、縦スクロール漫画の国際市場を牽引してきたグローバル企業である。一方、noteは日本国内で1000万人を超えるクリエイターと読者をつなぐ発信基盤として、テキスト、漫画、イラスト、動画まで多様なUGCを生み出してきた。両者の提携は、単なる出資ではなく“日本発コンテンツの国際展開”と次世代IPモデルの構築という大きな文脈に位置している。
■note × NAVER が意味する「新しい流通モデル」
NAVERはUGCからヒット作を生み出す仕組みを持ち、作品をwebtoon形式で世界へ届け、さらに映像化やグッズ化まで行う“IP製造の工場”として機能している。一方のnoteは、表現者の母数と多様性に圧倒的な強みを持つ。今回の提携は、この両者の資産を掛け合わせることで、noteで生まれた作品を世界規模の読者へ届けるための「新しい流通のハイウェイ」を作る試みでもある。
日本の漫画産業では、長く紙の出版や出版社主導による流通モデルが中心だったが、noteとNAVERの提携は“プラットフォーム主導”の新しいIP流通の扉を開く。noteにアップされた漫画、イラスト、物語は、NAVERの技術を用いてwebtoon形式へ再構成され、翻訳され、各国の読者に向けたUIに最適化される。出版社や雑誌の枠を超え、個人クリエイターの作品が国境を越えて届く可能性が広がった。
今回の提携の本質は「クリエイター発のIPが、データをもとに発掘される」仕組みが生まれることにある。noteには膨大なUGCが蓄積しており、漫画や短編小説、日記、エッセイ、エッセイ漫画まで多様な表現が日々生まれている。これらは従来の商業出版では拾いきれなかった作品群だが、NAVERが得意とするデータドリブンな“読者の反応分析”を組み込むことで、潜在的な人気IPを可視化できるようになる。
さらに、NAVERの持つ生成AI技術や制作支援ツールを活用すれば、漫画の翻訳、カラー化、コマ再構成、縦スクロール化といった作業を効率化し、個人クリエイターの負荷を大きく軽減できる。これにより、単行本化が難しかった個人発の作品でも、webtoon向けにプロ品質で再構築され、世界展開に耐えうる形に仕上げることが可能になる。
つまり、出版社主導のトップダウン型のIP開発ではなく、“草の根から生まれた作品が国際IPへ成長する”ボトムアップ型モデルの実現が現実味を帯びてきたのである。
■日本の漫画産業にもたらす変化
note × NAVERの提携が日本の漫画界に与える影響は大きい。従来、日本の漫画家がヒットを生むルートは限られていた。雑誌で連載する、Web漫画サービスに採用される、出版社の編集者に見いだされる――こうした従来の流れは今後も重要だが、そこに新しく個人発からnote、NAVER世界へという別ルートが追加される。
この変化により、若手作家やインディークリエイターにとって、出版社に所属せずとも世界中に読者ができる“第三の道”が生まれる。また、海外読者に合わせた作品フォーマット変換、短話連載型のコンテンツ設計、翻訳・UI最適化など、従来は出版社しか持ち得なかった機能がプラットフォーム側の資産として提供されるようになる。
つまり、出版社、プラットフォーム、個人クリエイターの三者が、これまで以上に競合にも協業相手にもなりうる流動的な構造が生まれるのだ。
今回の提携は、2026年以降に本格的な成果が見えはじめるだろう。note 発の作品がNAVERを通じて世界に配信され、場合によっては実写ドラマ化、アニメ化、ゲーム化といったクロスメディア展開が行われる可能性もある。また、NAVER 傘下の LINEマンガとの連携により、日本国内でもwebtoon転換されたnote作品が増えることが予想される。
もしこの仕組みが軌道に乗れば、日本の漫画産業は“出版社だけがIPを握る時代”から、“多発的にIPが生まれ、グローバルに育つ時代”へと大きな転換を遂げる。それは同時に、世界の漫画文化の中心に日本が再び位置するための、新しい構造整備でもある。
noteとNAVERの提携は、単なる資本参加ではなく、日本の漫画文化とクリエイター経済圏に対する“構造変革”の布石だ。出版社、プラットフォーム、個人クリエイターが並列で作品を生み、世界に届ける未来。その最初の一手として、今回の資本提携は非常に大きな意味を持つ。これから日本の漫画業界は、「誰でもIPホルダーになれる時代」の本格的な入り口を迎えようとしている。
























