LINEマンガ『四度目の夫』が「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」で本賞受賞 日本人作家初の快挙を現地レポート

『四度目の夫』日本人作家初の快挙達成

 韓国・ソウルで2025年10月22日に開催された「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」で、LINEマンガのオリジナル作品である明生チナミ氏の『四度目の夫』が本賞を受賞した。日本人作家の受賞は史上初。世界のwebtoon産業を代表する式典の壇上で拍手に包まれたこの瞬間は、国内オリジナルwebtoonが国境を越えて評価された節目となった。

■国際舞台で響いた日本発のwebtoon

 明生チナミ氏は大分県出身のマンガ家。2012年に『とべないとりお』でデビュー。2020年には第2回LINEマンガ大賞で『ラブミーテンダーにさようなら』が最優秀賞を受賞するなど、実力派として知られている。『四度目の夫』は2024年12月から連載が開始された、明生氏初のwebtoon作品であり、他の受賞作が韓国作品で占める中、唯一の日本発の受賞作となった。

 授賞式には明生氏の代わりに、『四度目の夫』の担当編集であるLINEマンガの小林氏が登壇し、受賞メッセージを代読した。

『四度目の夫』の担当編集である小林氏(右)が登壇。明生チナミ氏の受賞メッセージを代読した。

 「この度は素晴らしい賞をいただき、心から嬉しく思っております。初めてのwebtoon制作は戸惑いの連続でしたが、縦スクロールならではの奥深さや画面表現のすごさを学ぶたびに、新しい発見と刺激を感じました。今後も読者の皆様に楽しんでいただける作品を描けるよう、精進してまいります。」

 拍手が鳴りやまない中、受賞トロフィーを掲げる編集者の姿に観客から歓声が上がった。会場には『四度目の夫』の応援スローガンを掲げる一般ファンの姿も見られた。

■「日本で読んでファンになりました」──日韓をつなぐ読者の存在

「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」の授賞式会場であるソウルのロッテシネマのディスプレイには作品の書影が並んでいた

 授賞式には事前応募で選ばれた100名の一般参加者が招待された。その中には、ソウル在住の韓国人学生の姿もあった。彼女は日本に留学中に明生氏の作品のファンになり、授賞式のために会場を訪れたという。

 「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」は、文化体育観光部と韓国コンテンツ振興院が主催する国際アワードで、世界のwebtoon産業の中でも最も権威のある賞の一つ。昨年の第1回に続き、今回の作品公募では読者推薦作品1338作が寄せられ、世界中のファンの強い関心を示した。ノミネート候補は、クリエイター・制作会社からの78作品と、読者推薦トップ21作品を含む合計99作品から選出。審査委員長を務めたのは、韓国マンガ界の巨匠イ・ヒョンセ氏で、開会宣言では次のように語った。

 「韓国のwebtoonは、まだ“勉強ができる小学生”の段階にある。だからこそ、世界中の創作者と読者が共に努力し、より成熟した文化へと育てていかなければならない。」

 その言葉どおり、今回のアワードでは国境を越えた創作が高く評価された。『四度目の夫』は、構成力と映像的な演出、そして「縦読みフォーマットで描かれた日本的叙情」において、他作品とは異なる独自の美しさを放っていた。

■LINEマンガが切り開く日本発webtoonの地平

『四度目の夫』の受賞を大きく紹介。韓国でもより日本のwebtoonが注目される契機となった 

『四度目の夫』は、LINEマンガのオリジナルwebtoonおよび横読みマンガを企画・制作・編集する部門「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」発の作品だ。「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」では、作家と編集者が1対1で取り組む従来のスタイルにとどまらず、原作小説のコミカライズ、分業型のwebtoon制作、さらにプロ・アマ問わず誰でも自由にマンガを投稿できるサービス「LINEマンガ インディーズ」での作品募集など、多様なアプローチでオリジナル作品を生み出している。

 明生チナミ氏はこれまで紙媒体やアプリで横読み作品を手がけてきたが、今回初めてwebtoonに挑戦。日本的な時代背景と現代的なロマンス演出を融合させた独特の世界観が高く評価された。

 本作は、三度も夫を亡くした伯爵令嬢・藤林美青が、借金の肩代わりと引き換えに大地主の富嶋基と結婚するという、美麗ミステリーロマンス。美青には「関わると早死にする」という呪いの噂があり、富嶋がそれを承知で結婚を申し込んだ理由や、呪いの真相など、愛と運命をめぐる物語が展開する。美しい装束や光と影の描写がスマホの縦画面で効果的に映えるよう設計されており、ページをスクロールするごとに“映画のような没入感”が生まれる。

 今回のアワードでは、作品選考の専門審査とは別に、読者がオンライン投票で参加できる「読者人気賞」にも注目が集まった。これはファンの熱量を可視化する仕組みであり、コミュニティを継続的に温める仕掛けとしても機能している。今後の展開にも期待が高まる。

■“物語を描く力”は国境を越える

会場の外には「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」で受賞した作品のトロフィーが飾られていた

 『四度目の夫』の受賞は、日本のマンガ文化がwebtoonという新しい器の中で再び世界と出会った瞬間でもあったといえるだろう。美しい情感と物語の強度は、言葉や文化を超えて伝わる。『四度目の夫』が証明したのは、形式を越えて“物語そのもの”が人をつなぐという普遍の力である。

 ■書誌情報
『四度目の夫』
著者:明生チナミ
配信:LINEマンガ 
https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0003486

「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」公式サイト
https://www.webtoonawards.kr/

「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」受賞作品
大賞:『ミレの骨董品店』
本賞(10作品):『悪霊狩猟団:カウンターズ』『怪力乱神 ~血に染まった本性~』『四度目の夫』『瓜二つの娘』『マルは子犬。』『ミレの骨董品店』『枯れた花に涙を』『父無双』『全知的な読者の視点から』『鉄槌教師』
読者人気賞:『デビューできないと死ぬ病気にかかってしまいました』
審査委員長賞:『全知的な読者の視点から』

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