【話題作試し読み】ポジティブ女子高生はなぜVTuberを目指す? 最新webtoon『シークレットスターライブ』が描く夢の在り方

『ReLIFE』などのヒット作を持つ人気マンガ家・夜宵草が8月よりLINEマンガで連載を開始した新作webtoon『シークレットスターライブ』が注目を集めている。アイドルへの足がかりとしてVTuberを目指すポジティブ女子高生・星宮琴夏と、夢を諦めかけた絵師・織尾紡久を軸に展開する、キラキラとしながら力強い物語だ。
超有名企業・スターレーションの社長令嬢であることを隠し、「かわいさ」だけを武器にアイドルを目指している琴夏。しかし、オーディションは連戦連敗で、ついには将来を心配した父親から政略結婚の縁談を持ちかけられてしまう。親友の七希には「社長令嬢」という肩書きは武器になると言われるが、家の力を絶対に借りたくない琴夏は、“コネではない武器”を模索し始める。オーディションで必ず聞かれるのは、SNSでの活動実績やフォロワー数。“身バレ”せずにこうした数字を積み上げてアピールするにはどうすればいいか……と頭を悩ませるなかで閃いたのが、「VTuber」になることだった。
社長令嬢で、容姿も美しい。「自分はかわいいからアイドルになることが天命」と信じて疑わず、その足がかりとしてVTuberを目指すという琴夏は一見、ただただ世間知らずのお嬢さんだ。実際、周囲の人々から奇異の目で見られ、「世の中をナメている」と嗜めらることも多いが、どこまでもポジティブで、ひたむきに自分の力で人生を切り拓こうとする姿には、確かなアイドル性がある。人の気持ちを否応なく前向きに動かす琴夏のパワーが物語を駆動していくのが痛快だ。
さて、VTuberになるためには当然、アバターが必要だ。琴夏がネットでイラストを見ていてビビッときたのが、Rionという絵師が描く素敵なキャラクターだった。いつでも猪突猛進、駆け引きを知らない彼女は、制作依頼のメッセージにVTuberになりたい理由を正直にそのまま書いて送ってしまう。「申し訳ありませんがお断りいたします」「そして僭越ながら、アイドル活動をナメているあなたにVTuberは無理だと思います」というのが、Rionの返答だった。
これに困った琴夏は、常に冷静なバイト先の先輩・紡久に相談するが、なんと彼こそがRion本人だった。親に隠れてイラストを描き、クリエイターとして生きることを諦めかけている紡久は、自分がRionだとは名乗らずに話を聞いていく。今の時代、美しいイラストを描ける人は大勢いる。「他の人を当たられては?」と丁寧にアドバイスする紡久だが、琴夏はRionが描く作品の素晴らしさを熱く語り、「わたしがVTuberになるなら この人の作ったキャラで生きたい!って思ったの」と目を輝かせる。こんなにも真っ直ぐに自分の作品を褒められ、誰かに必要とされるのが初めてだった紡久は心の奥でよろこび、愚直に夢を追いかける琴夏を羨ましいとすら感じるのだったーー。
そんな冒頭から紆余曲折、さまざまなドラマが巻き起こっていくが、自己肯定感に天と地の差があり、家庭環境も性格もまったく違うふたりが「夢」に向かって動いていく姿が楽しくも感動的だ。アイドル、VTuber、イラストレーター、社長令嬢に御曹司と、一般的な読者からするとやや距離感のある世界が描かれているが、入り組んだ設定のSF作品でも人の感情の機微を見事に描いてきた夜宵草の作品だけに、深く感情移入させられる。暴走しがちな琴夏に的確なツッコミを入れながら、愛を持って見守っている親友・七希、琴夏の縁談の相手で、思わぬ形で交流を深めていくことになる鳳グループの次期社長・すばると、主要キャラクターはいずれも魅力的で、すでに推しているファンも多いだろう。
VTuberは年々人気が拡大しているが、多くのファンを獲得できるのはほんの一握りだ。「容姿」は入口にはなるし、「キャラクター設定」もフックにはなるが、ファンとリアルタイムで、長時間に及ぶコミュニケーションをとるライブ配信が主戦場となるVTuberは、もしかしたらアイドル以上に、“生身の人間性”が問われる存在と言えるかもしれない。真っ赤に燃える太陽のような琴夏のキャラクターと、内に秘めた青い炎のような紡久の情熱は、配信の世界でどんな評価を受けていくのか。アイドルへの夢と、ふたりのねじれた関係はどうなっていくのか。美麗な作画に見惚れながら、毎週土曜日の更新が楽しみになる作品だ。
『シークレットスターライブ』
作品URL:https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0003699
コピーライト:ⒸYayoiso/LINE Digital Frontier





















