『ジョジョ』でもっとも“男臭い”物語? 全く新しい世界を切り拓いた『スティール・ボール・ラン』

2026年にNetflixで配信されるアニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』(以下、SBR)のティザーPVが公開された。同作は『ジョジョ』シリーズの第7部にあたり、“最高傑作”との呼び声も高い。
本稿では同作ならではの魅力としてよく挙げられる「熱くて男臭いバディもの」という側面について、掘り下げていきたい。
『SBR』は1890年代、西部劇の時代を舞台とした物語。馬だけを頼りに北米大陸を横断する過酷なレース「スティール・ボール・ラン」に挑む人々の姿が描かれる。
作品としてのもっとも大きな特徴は、主人公がジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリという2人の男性であること。他の『ジョジョ』シリーズでは第3部のジョースター一行に象徴されるように、主人公を含む数人のキャラクターがチームを組んで活躍することが多かった。しかし同作では強い絆で結ばれた“バディ”が物語の中心であり続ける。
ジョニィはかつて天才ジョッキーと呼ばれながらも、不慮の事故で下半身不随となった青年。ジャイロは回転する鉄球を武器に戦う謎多き男だ。2人の関係は友であり、師弟であり、お互いの信念をぶつけ合うライバルでもある。富や名誉ではなく、自らの誇りと信念のために走り抜く2人の姿は、現代では見られないような“男の生き様”を映し出している。
この“男臭さ”をさらに濃密にしているのが、2人が道中で出会うキャラクターたちだ。まず外せないのが、リンゴォ・ロードアゲイン。敵ではあるものの、どこまでも自分の信念を貫き通そうとする姿は気高さすら感じさせる。
「男の世界」という言葉に象徴されるように、リンゴォの胸には現代の価値観とは相いれない時代錯誤な美学が宿っている。ほとんど狂人スレスレなのだが、だからこそその力強い生き方に魅力を感じる読者は多いようだ。
ほかにも作中には、西部劇のヒーローを思わせる保安官マウンテン・ティム、己の誇りと正義を貫く先住民の戦士サンドマンなど、強い信念を持った人物たちが登場する。ジョニィとジャイロはそうした出会いに満ちた旅路のなかで成長し、ときには魂がぶつかりあうような熱い戦いを繰り広げていく。
“スタンドバトル”の新たなステージに期待
『SBR』のアニメ化にあたって、何より期待が高まるのはバトル描写だろう。主人公コンビのジョニィは爪を発射する能力をもち、ジャイロは鉄球を回転させる技術によって戦うスタイルで、ある種地味ではあるのだが、そこには無限大の可能性が宿っている。
その一方、敵サイドには時間に干渉するスタンドなど、これまでのシリーズでも屈指と言えるほど強力な能力者が揃っている。そんな強敵たちを2人がいかにして撃破するのか……ということが、大きな見どころの1つと言えるだろう。
さらに物語の主役をチームではなくバディにしたことで、より一層緊密なチームワークが描かれると共に、それぞれの能力の劇的な成長についても掘り下げられる。もちろん『ジョジョ』シリーズの常識として、たんなるパワーアップではなく、精神的な成長や覚悟などが能力に影響を及ぼすため、そのドラマ性にも期待すべきだろう。
また同作は馬に乗ったまま戦うという要素も特徴的で、他シリーズとは一味違ったバトルが繰り広げられる。そこで懸念点となるのは、馬の作画を再現することの難しさだが、これまで『ジョジョ』シリーズの制作を担当してきたデイヴィッドプロダクションの手腕に期待したいところだ。
熱い魂のぶつかり合いと、これまで以上に深みのある能力バトル。長年ファンが待ち望んだ第7部の映像化で、また新たな伝説が誕生するかもしれない。




















