ラグジュアリーブランドの今後の経営戦略は? 高騰、エシカル、価値観のズレどう調整していく?

ラグジュアリーブランドの今後の経営戦略は? 高騰、エシカル、価値観のズレどう調整していく?

 ここ数年、欧米市場でラグジュアリーブランドの売上鈍化や人気低下が指摘されている。コロナ禍以降に拡大した「報復消費」が落ち着きを見せる中、価格高騰が購買意欲を削ぎ、ブランドのエシカル姿勢への不信感も高まっている。さらに若い世代の価値観とのズレが、かつての「ラグジュアリー信仰」を揺るがし始めた。

価格高騰が招いた買えないラグジュアリー

 まず大きな要因は価格の上昇だ。グッチやルイ・ヴィトン、シャネルといった大手ブランドは近年、毎年のように価格改定を繰り返している。バッグは数年前に比べて数十万円単位で値上がりし、かつては「頑張って手が届くご褒美」ものが、一般的な消費者から遠ざかってしまった。

 この流れに危機感を抱いたのがバーバリーだ。市場の反応を受けて一部商品の値下げに踏み切り、ミドル層へのアプローチを強化した。ブランド戦略としては異例だが、「買えないラグジュアリー」化に対する修正の一手として注目されている。

エシカル不信と価値観の乖離

 もう一つの背景は、ブランドが掲げる「サステナブル」「エシカル」への不信感だ。リサイクル素材やカーボンニュートラルを強調しながら、裏では大量生産・大量廃棄が続いているのではないか。SNS界隈はそうした矛盾に敏感であり、ブランドのメッセージと実態が乖離していると感じれば、すぐに不信感が広がる。加えて、若者の価値観とのギャップも大きい。ミレニアルやZ世代は「見せびらかすための高級品」よりも「自分らしさ」や「ストーリー」に重きを置く。高額なバッグより、ユニクロ×ハイブランドのコラボや、デザイナーズのスモールブランドに移行するケースが増えている。

 こうした市場の変化に対応するため、ブランドも次々と新戦略を打ち出している。グッチは70〜80年代風のレトロデザインを前面に押し出し、ノスタルジーを武器に幅広い層へ訴求。ルイ・ヴィトンは「製品」より「体験」に重きを置き、展覧会やポップアップを通じて消費者との関係を深めようとしている。バーバリーは先述の通り価格戦略を見直し、より広い層にアプローチ。ブランドはもはや「モノを売る」だけでなく、「どのように価値を共感してもらうか」に注力しているといえるだろう。

若者が支持するヴィンテージ

 ただし、ラグジュアリーブランドが完全に若者に見放されているわけではない。むしろヴィンテージ市場では依然として高い人気を誇っている。古着店やリセールアプリでは、80〜90年代のグッチやヴィトンのバッグ、バーバリーのトレンチコートなどが「一点物」として再評価されている。新品の価格には手が届かなくても、ヴィンテージを通じてブランドの歴史やデザインに触れたいというニーズは強い。そこには持続可能性や個性といった現代的価値観も反映されている。

 欧米での人気低下は、ラグジュアリーブランドがかつてのように「高価格=憧れ」という方程式では通用しなくなったことを示している。今求められているのは、価格に見合った透明性、エシカルな実践、そして個々の価値観に寄り添うストーリーテリングだ。「手が届かない夢」から「共に歩む文化」。ブランドがどう再定義されるかが、今後のラグジュアリーマーケットの成否を左右するのではないか。

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