今どきの高校生は「多様性」という言葉が嫌い? 『今どきの若いモンは』吉谷光平独占インタビュー

「最強キャラ」としての石沢課長のむずかしさ
ーー主人公・麦田を描く上で大事にしていることはありますか。共感型から憧れ型へとシフトしていっている様にも感じますが。
吉谷:麦田は自分の憧れが入ったキャラクターだと思います。ときにミスをしちゃうけれど、かわいいから許されるみたいな人っているじゃないですか。そんな人が羨ましいという自分の気持ちが麦田には入っていると思います。
ただ愛される人にも弱さは必要で、麦田は弱さをかなり描いていますね、馬鹿だし……(笑)。ときに嫌われそうなこともするけど「はいはい」と言って済まされる、愛されるための塩梅を意識しています。
ーー描くなかで楽しいキャラクターは?
吉谷:麦田は比較的描きやすいと思います。出来事をぶつけたら何かやってくれるだろうみたいな(笑)。対照的に石沢課長は描きづらいです。作品の最強キャラなので「なんで課長いるのに解決しないんだよ」という感じになってしまう。最強キャラが活躍すると主人公が活躍できないので、石沢課長を活躍させることがむずかしいです。

ーー印象的だった読者の反応は?
吉谷:アラサー編で久坊というキャラクターを出したときにたくさんの反応が来ました。久坊は中間管理職の愚痴をずっと言うキャラクターであり、共感の声がとても多くて「みんなそう思っていたんだ。みんなツラいんだな、大変なんだな」と思いましたね。
ーー2022年にはドラマ化もされました。いかがでしたか?
吉谷:すごく良かったです。脚本をもらったときは正直あまり想像がつかなかったのですが、実際にドラマを見たら、当たり前ですがちゃんとしててびっくりしました。
麦田・石沢課長を演じた福原遥さん・反町隆史さんの演技はもちろん、田貫(たぬき)社長を演じたイッセー尾形さんの演技がすごかったです。田貫社長が麦田を詰めるシーンがあるのですが、その様子が本当に怖くて。演技を見て「まさにこれを描きたかったんだよな」と思い、俳優さんの演技ってすごいなと思いました。
ーー本作では、極端な考え方をしているけれどしっかり人間味のあるキャラクターが描かれているかと思います。
吉谷:キャラクターの思考を描くなかで「一理ある」ということは意識しています。「絶対にこれが正しい」という考え方はないと思うので。「その考え方も一理ある」と思えるキャラクターがたくさん登場する漫画が、自分の思ういい漫画なのかもしれないです。
ーーやりたいことに挑戦するなか、ときに失敗することもあると思います。失敗を乗り越えるコツなどはありますか?
吉谷:なるべく喜んだり、悲しんだりしないことを意識しています。喜ぶとそのあとがっかりしちゃうかもしれないので。うれしいときでも「でも喜びはあんまり続かないよ」と思った方が淡々と頑張れます。
もちろん例えば家族が事故にあったりなど、ときに悲しむことはあると思いますが、自分のことは一喜一憂しないようにしています。作中で喜び、悲しんでいる麦田は、もしかしたら参考にしない方がいいかもしれないです(笑)。
ーー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
吉谷:ここからが本番だと思うんです、麦田の物語は。麦田が「課長になる」ことが目標だとしたら、今ちょうど半分ぐらいだと思います。もう半分、絶対に面白くなると思うので、楽しみにしていてください。
新社会人の方、進路を決めている大学生の方は面白いと感じる作品だと思うので、ぜひ読んでもらえればと思います。



























