“下心”と“ピュア”な恋は両立する? 令和ラブコメの注目作が挑戦する、恋愛漫画の最前線

「結局下心」問題を乗り越えるラブコメの数々
「下心と純粋な好意は両立するのか」という現代的なテーマを扱っている『やちるさんはほめるとのびる』だが、同作以外にもさまざまなラブコメ作品がこの難題にアプローチしている。

たとえば7月22日にガンガンコミックスpixivレーベルで書籍化された犬好晶『クマとウサギは友達ではいられない』の内容を見てみよう。
同作は、正反対な男女を主人公とした“NTR(寝取られ)ない”ラブコメ。登場人物の1人、熊坂猛は見た目が理由で周囲から“チャラ男”と思われているが、本当は誰よりも純朴な内面をもつ大学生だ。その一方でヒロインの兎沢清夏は、一見清楚な見た目をしているが、実は下心まみれの内面をもっている。
一切下心なく純粋に友情を育もうとする熊坂に対して、兎沢は隙あらば一線を越えようとして、情熱的なアプローチを仕掛けていく。あくまでコメディではあるものの、下心を向ける男性とピュアな女性という構図をここまで大胆にひっくり返している漫画は珍しいだろう。
また「サンデーうぇぶり」で連載中の『となりの席のヤツがそういう目で見てくる』も、男女の下心をテーマにしたラブコメ作品だ。

主人公の池沢は軽薄な男子高校生で、あるとき隣の席の女子・江口にセクハラめいた軽口を叩く。しかし江口は逆に池沢が爪を綺麗に整えていることや、ワイシャツの胸元から中が覗き見られるようになっていることを指して「めっちゃエロいよ」と、下心のカウンターをお見舞いする。
すると池沢は自分に向けられた欲望に戸惑い、「俺をエロい目で見るな!!!!」と絶叫。“下心は男性が女性に向けるもの”という偏見がもろくも崩れ落ちる瞬間だ。
こうしたラブコメ漫画の存在は、女性が男性に向ける下心の存在を認めることで、恋愛の描き方をアップデートしているようにも見える。
すさまじい速さで価値観が変わっていく現代にあって、ラブコメの世界では次々と意欲作が現れている。令和を代表する大ヒット作が出てくることを期待しつつ、各作品の展開を見守りたい。






















