【日本人初の快挙】王谷晶『ババヤガの夜』が世界最高峰のミステリー文学賞・ダガー賞〈翻訳部門〉を受賞

王谷晶『ババヤガの夜』ダガー賞受賞!
英語版『The Night of Baba Yaga』

 日本時間7月4日(金)早朝、英国推理作家協会(CWA:The Crime Writers’ Association)は、2025年のダガー賞〈翻訳部門〉(Dagger for Crime Fiction in Translation)の受賞作として、王谷晶『ババヤガの夜』英訳版(The Night of Baba Yaga)を発表した。

 翻訳はサム・ベット、出版社はFaber & Faber(2024年9月刊)。本賞は、世界で最も権威あるミステリー文学賞のひとつであり、今回の王谷の受賞は日本人として史上初、アジアの作家としても史上2人目の快挙となる。

 本作は、2020年「文藝」秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」にて全文発表され、同年10月に単行本化、2023年5月に文庫化された。日本国内の部数は、単行本/文庫/電子書籍累計で3万8000部突破している。(2025年7月4日現在)

 翻訳版はイギリス・アメリカ・韓国で発売中。今後ドイツ・イタリア・ブラジルで出版予定となっている。

「ダガー賞」授賞式での王谷晶スピーチ全文

まずは審査員の皆さん、この国で私の本を出版してくださったFaber&Faber、アメリカで最初の英語版を出してくれたSoho Press、タトル・モリ エイジェンシー、印刷製本、流通、販売してくださった皆さん、そしてこの本を手に取って大切な時間を使ってくれた読者の皆さんに大きな感謝を捧げます。

今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています。「モンティ・パイソン」のスケッチに出ている気分です。昨夜は「フォルティ・タワーズ」みたいな素敵なホテルに泊まりましたし。何より感謝したいのは、翻訳のサム・ベットさんです。この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました。本当にありがとうございます。私はミステリ専門の作家ではありません。様々な種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています。曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。この作品の主人公たちも、はっきりとラベリングできない関係と人生を手に入れます。これは何よりも私が読みたかった要素です。同時にこれはバイオレンス満載の物語でもあります。ここにお集まりの皆さんは私と同じく血や殺人や犯罪や、復讐や暴力が大好きな方々だと思います。もちろんフィクションの。私はバイオレンスフィクションの愛好家ほど、よりさらに現実世界の平和を願い行動しなければいけないと思っています。リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。これからも首無し死体やパーティでの毒殺を楽しむためにも、今回頂いた栄誉を、世界の平和のために少しでも役立てたいと思います。Thank you.

2025年7月3日夜(ロンドン時間)

■王谷 晶 Akira Otani
1981年、東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』『ババヤガの夜』『君の六月は凍る』『他人屋のゆうれい』『父の回数』、エッセイ集『カラダは私の何なんだ?』『40歳だけど大人になりたい』などがある。

■サム・ベット Sam Bett
1986年、アメリカ・ボストン生まれ。小説家、翻訳者。訳書に三島由紀夫『スタア』、太宰治『道化の華』『乞食学生』、デビッド・ボイドとの共訳で川上未映子『夏物語』、『ヘヴン』(国際ブッカー賞候補)、『すべて真夜中の恋人たち』(全米批評家協会賞候補)など多数。

■書誌情報
『ババヤガの夜』
著者:王谷晶
仕様:文庫判/並製/208ページ
初版発売日:2023年5月9日
税込定価:748円(本体価格680円)
ISBN:9784309419657
出版社:河出書房新社

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