【漫画】幕末志士、現代でどうお金を稼ぐ? 贋作作りに勤しむ坂本龍馬・岡田以蔵を描くコメディが面白い

【漫画】幕末志士は現代でどうお金を稼ぐ?

ーー現代にタイムスリップした幕末志士たちが、自ら手紙を作成する設定が非常に面白い作品でした。設定の着想はどのように得たのでしょうか?

黒江S介:歴史上の人物の手紙が高値で取引されるというのは現実でも聞く話で、現在世に出回っている手紙にも贋作が混じっている可能性があるらしいんです。明治時代に取引の話が広まり、贋作が作られたらしいと歴史家の方からうかがいました。

 それなら、本人たちが贋作を作って売る話は面白いかもしれないと思いました。そのうえ本人が書いたにもかかわらず贋作認定されるのも、オチがついて面白いかなと思い描き始めたのがきっかけです。

ーー物語のなかで、黒江S介さん自身が気に入っているポイントは?

黒江S介:手紙の書いた人物と受け取った人物を、“坂本龍馬と岡田以蔵にしよう!”となるところが気に入っていますね。やっぱり現代でも人気がある2人で、歴史的なメタを感じるのがいいなと思います。

 ちなみに、現実でも岡田以蔵の手紙というのは、ほとんど世に出ていないんですよ。岡田以蔵といえば、人斬りなどよくないイメージもあるじゃないですか。手紙自体は実在していると思うけど、持っている方が子孫である事実をあまり公表したくない場合が多いのではというお話を聞きました。

ーー作品を読んでいると、細かい部分のリアリティにも気を配っているのが非常に伝わりました。“歴史上の人物がタイムスリップしてくる”物語を描くうえで、気をつけていたことはありますか?

黒江S介:作中には土佐出身の人物が3人登場するんですけど、とにかく方言だけは正確に描写するよう気をつけました。

 私自身大阪出身で、映画やドラマなんかで間違えた関西弁や使わない関西弁を耳にすると、少し残念な気持ちになってしまうんですよね。例えば今では使わない「そやさかい」とか言われると、良いストーリーでも「あぁ!惜しい!」と思ってしまいます。なので、土佐弁については徹底的に監修してもらいました。

 あとは非現実的なことが起きる作品なので、歴史パートは徹底的にリアルに、とにかく事実と異なることを描かないように気を配りましたね。

ーー『サムライせんせい』の主人公を武市半平太にした理由は何ですか?

黒江S介:幕末を生きた人物のなかで、誰が現代にタイムスリップしたら面白いかなと考えたんです。王道なのはやはり坂本龍馬ですけど、龍馬は現代に来ても上手くやっていけそうだなと思いました。岡田以蔵も、意外と流されるままに生きていけるかなというイメージがあります。

 その点、武市半平太は生真面目な“ザ・武士”のイメージで、そのギャップに笑えるかなと考えました。現代のすべてのモノに勝手に驚いてくれて、その姿が面白いかなと!

ーー登場する幕末志士はどのように決めましたか?

黒江S介:武市半平太を主人公にした時点で、岡田以蔵の登場は絶対だなと思いました。そして2人の師弟関係を描くなかで、対照的なコンビをもう1組出したかったんです。

 そこで思いついたのが、重苦しい師弟である武市半平太・岡田以蔵と比べて、深刻な空気にならなそうな師弟の坂本龍馬・陸奥宗光でした。

ーー黒江S介さんが漫画を描き始めたきっかけは?

黒江S介:小さい頃からお絵描きセットを持ち歩いているタイプで、絵を描くのは好きでした。中学生や高校生の頃には創作漫画を描き始め、超内輪でしたけど面白いと言ってもらえるのが嬉しくて。やっぱり漫画を描くのって楽しいんだなと、漫画家の道を意識していました。

 ただ、商業誌で描かせていただくようになると、ほかの漫画家さんが上手すぎて自分は井の中の蛙だったんだなと実感させられましたね……。

ーー黒江S介さん目線で特に上手だなと感じる作家さんはいますか?

黒江S介:絵が上手な作家さんはたくさんいるんですけど、私は細かいところまで描き込んでいる方が好きなんです。

 細かい描き込みでいうと、森田まさのり先生は本当にすごいなと思います。そこまで描かなくても十分伝わるのに細部までこだわれるのは、一種の才能だと思っています。森田まさのり先生はチャックの粒々まで細かく描かれていて、本当にすごいんです……!

ーー現在も、“タイムスリップ”をテーマにした漫画を描いているんですよね。

黒江S介:今は、『タイマド〜タイムスリッパーおもてなし窓口〜』という作品を連載しています。「タイムスリップしてきた過去の人物を保護する窓口が役所にあったら?」というお話です。

 『サムライせんせい』に登場する人物たちについて考えていたことが設定が出来たきっかけなので、ある意味『サムライせんせい』がもとになったと言えるかもしれません。

 今回の手紙のお話を読んで面白いと思っていただけた方は、『タイマド』も覗いてみてもらえると嬉しいです!

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