ミセス・大森元貴の快演で話題『#真相をお話しします』は原作を改変した? 「暴露系エンタメ」の挑戦

映画『#真相をお話しします』が4月25日から全国で公開された。本作品は、結城真一郎による同名小説が原作となっている。
原作の小説は5つの短編からなる作品。現代を生きる人々にとってもはや身近な存在となったユーチューバーやマッチングアプリが題材となり、現代的なテーマの中にミステリー要素を含めることに成功している。
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短編集ということでひとつひとつの作品が独立しているため、それぞれにさほど多くのページ数は割かれていない。そのため読んでいると、心の中に浮かんでくる違和感が消えないうちに大きな謎が顕在化され、一気に解決されていく爽快感を味わうことができる。
その点で、多くの人がイメージするミステリー小説とは一線を画す。トリックにいまひとつ入り込むことができない、ミステリーが苦手な人でも読み進めやすい構成となっており、ジャンルで“読まず嫌い”していた人にこそぜひ読んでもらいたい作品だ。
翻って映画『#真相をお話しします』はどうだろうか。
映画でダブル主演を務めた大森元貴と菊池風磨の役名はそれぞれ鈴木と桐山となっている。ただ、原作から入った人からすると、すぐに小説のキャラクターと一致させることは難しいだろう。
特に大森が演じた鈴木というのは背景も含めて全く覚えのない人間。それでも、どんどんと「あのキャラクターでは?」という思いを強めさせてくれたのは大森の演技力ゆえだろう。菊池演じる桐山との2人のシーンが主だが、淡々と話していたかと思えば、一気に熱量を上げて追い詰める。不穏な空気を自ら作り出してしまうような狂気さえ感じられる。
鬼気迫る表情はアーティストとしての彼とはまた異なる一面。インタビューで中条あやみも語っていた通り、「音楽だけでなく、その才能もあるんですか」と素直に拍手を送りたくなる。
また、短編集の映画化としても秀逸なアプローチだった。
映画の中では「#真相をお話しします」という暴露チャンネルが存在し、視聴者が匿名でとっておきの暴露話を紹介して投げ銭を得るというシステムが確立されている。
その暴露話こそが小説における短編そのもの。実際にその場にいた、もしくは見聞きした者がスピーカーとなることで、配信の視聴者はもちろん、私たちも恐怖や驚きにあふれた事件を追体験できるという構成となっている。
ただ暴露話を順番に披露するだけでは、1本の映画として成り立たせることは難しいが、あるひとつの縦軸が通っていることによって、「暴露系エンターテイメント」という新たなジャンルを生み出している。その正体は物語の核心に迫るため記述することはできないが、映画の公式サイトをよく見ているとヒントが浮かんでくるようだった。
小説が驚きを提供することに重きを置いているとしたら、映画はもっと大きなものがテーマとなっている。他人の暴露話を聞くただの視聴者でいていいのか、人としてそれは正しい振る舞いなのか。エンタメの中にありながら自然と自身を省みることを促され、原作との“読後感”は大きく異なる。
小説から読んでも、映画から入ってもきっと後悔することはない。ゴールデンウィークに「真相」に迫ってみてはいかがだろうか。























