『対岸の家事』なぜ共感を呼んでいる? 識者に聞く、原作者・朱野帰子の作家性と演出の妙

『対岸の家事』なぜ共感を呼んでいる?

 現在TBS系列で放送中の火曜ドラマ『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』。育児や家事をテーマにした本作は、社会の中で立場の異なる人々が抱える生きづらさをリアルに描き、SNSを中心に反響を呼んでいる。原作は、『わたし、定時で帰ります。』などで知られる作家・朱野帰子だ。

  なぜ本作は幅広い層の共感を呼んでいるのか。『あらがうドラマ 「わたし」とつながる物語』の著者で、先日朱野との対談イベントを行ったライターの西森路代氏に、原作小説の魅力とドラマならではの演出について聞いた。

どんな立場の視聴者にも届く、誤解と理解の積み重ね

 第1話で描かれたのは、専業主婦として家事を仕事にすることを選んだ主人公・村上詩穂(多部未華子)と、働きながら家事もこなす2児の母・長野礼子(江口のりこ)のすれ違いだ。

  西森氏は、「第1話を観たとき、まず感じたのは“孤独”の描写の丁寧さでした。1人で子育てをしている主人公の辛さが、視聴者にしっかりと伝わってきましたし、それだけでなく、江口のりこさん演じる働く母親のしんどさも、リアルに描かれていました」と語る。

 『対岸の家事』では、専業主婦と兼業主婦、さらには男性の育児参加という多様な視点が描かれている。しかもそれは単なる対立構造ではなく、回を重ねるごとに登場人物同士が互いを理解し合う構成になっている。

 「本作では、強い言葉が使われることもあります。“専業主婦は絶滅危惧種”なんて表現も出てくる。でも、それがそのまま対立で終わらず、1話の中でちゃんと誤解が解かれていく。だから観ていて安心できるし、どんな立場の人でも共感できるんじゃないかと思いました」

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