映画を余すことなく楽しめる『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』関連書籍が必読のワケ

昨年12月20日に公開され、興行収入30億円を突破した『劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』。原作は、ファンのなかでも名作と呼び声高かった、同名タイトルの小説版。手掛けたのは『忍たま』TVシリーズだけでなくミュージカルの脚本家でもある阪口和久で、マンガ原作者の尼子騒兵衛が「忍者ってこんなにカッコよかったんだ!!」と絶賛コメントを寄せていたほど。TVシリーズのほんわかした雰囲気とはまた違う、室町時代を生きる忍者のなんたるかを描き出す同映画は、公開から4カ月たった今も、ファンを魅了し続けている。
6月には、Blu-ray&DVDの発売も決定しているが、先駆けて刊行された映画の公式ビジュアルブックとアニメコミックは、発売1カ月もたたないうちに、累計で10万部を突破。ここでは、その2冊の魅力をご紹介しよう。
※以下、映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』のネタバレに触れる内容があります。未鑑賞の方はご注意ください
映画を256Pの漫画に落とし込んだアニメコミック
アニメコミックは、その名のとおり、アニメの映像を切りとってコマとして配置し、マンガのように読み進めていく、要するに、映画の内容をそのままおさらいできるもの。Blu-ray&DVDの発売を待てばいいや、と思っている人もいるかもしれないが、読んでみると、これがなかなか、おもしろい。というのも、映像とはまた違う、書籍編集の視点で切りとられるコマの並びに、映像で観るのとはまた違う物語の空気感がたちのぼってくるからだ。
映像だと一瞬で見過ごしてしまうワンシーンが、しっかり拡大印刷されているのも、いい。個人的に嬉しかったのは、記憶を失った土井半助をドクタケ忍者隊の軍師・天鬼に仕立て上げるため、稗田八方斎が使った巻物中身をしっかり読めたこと。劇場版を観ていたとき、まさか歌と踊りと巻物(に描かれたマンガ)で洗脳するなんて⁉ とその突飛な展開に思わず笑ってしまったが、歌と踊りはともかく、マンガを画面上で細部まで確認するなんてできるはずもなく、なんとなく見逃してしまっていたのだ。それがこのアニメコミックでは、多分に美化された八方斎をふくめ、アメコミ風ビジュアルのすべてが確認できる。これ、けっこうファンにとっては嬉しいポイントなんじゃなかろうか。Blu-ray&DVDを手に入れたところで、いちいち静止するのも大変なので……。
静止が大変、という点でいえば、観ながら脳内キャプチャしていたシーンの一つひとつを、じっくり観察できるのもアニメコミックの利点だ。ファンにはそれぞれ、細部にまで注目しどころがあると思うので、もしかしたら「あそこがない!」と思う人もいるかもしれないが、256Pの1冊にみっちり、これでもかというほど詰め込まれているので、基本的には網羅されていることと思う。個人的に、抜き出されていて嬉しかったのはやっぱりラスト。ドクタケ忍者隊の兵糧を城下の貧民や孤児にわけあたえているシーン……を前に、土井先生ときり丸が視線をかわしているところ。
今いっとき食糧を分け与えることができたとしても、根本的な解決にならないことを、互いに孤児として育った二人は、よく知っている。それでも、そうすることが必要なのだと思う二人は、乱太郎をはじめとする他の忍たまたちのように、手放しに笑ってはいない。本映画の核となる、二人にしかわからない、通じ合えないものがあるからこその絆が、最後の最後まで感じられるこの場面を、改めてコミックで眺めることができる。