中条あやみ、フォトエッセイに込めた想いーー自分をさらけ出したことで伝えたかったこと

自分が助けられたからこそ、誰かを言葉で救いたい
ーー本書に綴られた言葉には「誰かを励ましたい」という想いを強く感じました。多くの人々にとって憧れの存在である中条さんには悩み相談が寄せられるのではないかと思います。例えばファンの方からInstagramのDMも来たりするそうですね。
中条:すごく来ますね。たまに返信することもあります(笑)。
ーー返信されるのは意外でした(笑)。
中条:もちろん長文を送るのは難しいのですが、すごく悩んでいる子のメッセージを読んで「自分もこういうことがあったよ」と返したこともあります。
以前は私も「あんな人になりたい」と誰かに憧れていたのですが、年齢を重ねるにつれて、仕事でも年下の子と接する機会が増えてきました。後輩の子たちを見ていると、自分も悩んでいた時期があるからこそ「後悔してほしくない」と思うんです。また、私自身も先輩の言葉や想いに助けられてきたことがたくさんありました。だからこそ、私の言葉で誰かを救うことができたらいいな、という想いは常に持っています。
ーーオーディションをたくさん受けて「結果は散々」だったことも書かれていますが、華々しく世に出てきた印象があったのでとても意外でした。ある意味では苦い記憶でもあると思うのですが、書こうと思ったのは、どのような想いがあったのでしょうか?
中条: 私もドキュメンタリー番組など観ていて「こんなにすごい方でも、こんなに苦労しているんだ」と思うことがありました。ハリウッドセレブのようなスターも苦悩を抱えていて、どんなに幸せそうに見えても、人は見かけによらず、いろんなことを考えている。完璧な人なんていないんだなと強く感じていました。私自身もコンプレックスや悩み、できないことを抱えています。でも、まずは自分を大切にすることで、周りの人のことも大切にできるようになる。「まずは自分が自分の一番の味方でいてほしい」という想いを込めて、言葉を書いていました。
偉大な先輩から芝居の現場で学んだ「伝えることの大切さ」
ーー大切にしている持ち物を紹介するページでは、それぞれのアイテムが中条さんの人生で関わってきた人々との思い出と結びついており、家族や仕事仲間への感謝が綴られていますね。誰かへの想いは常に伝えるようにされているのですか?
中条:私の父がイギリス人で、いつも「I love you.」「I’m proud of you.」と気持ちを言葉にしてくれる文化で育ちました。言葉にするのは少し恥ずかしいけれど、本書にも書いた言葉でもあるのですが、國村隼さんが「(お芝居がもっとうまくなりたいとかいろんなことを心のなかで考えていたとしても)結局、伝わらないと意味がない」とおっしゃっていて。それはお芝居においても日々を過ごしていても同じことだと思うんです。もちろん本にすることで言葉にできたこともありますが、日々を生きていても感じたことはちゃんと言葉にして相手に伝えようと思っています。
極端な話かもしれませんが、もしかしたらその人と会えるのはその瞬間が最後になるかも
しれない。前に、人は亡くなるときにできなかったことや言えなかったことを強く後悔す
る、と読んだことがあって。私は後悔を残したくない。だからこそ、私はできるだけ想い
を言葉にして伝えていきたいと思っています。暑苦しく感じるかもしれませんが(笑)。

中条:そうですね。この仕事を続けていても、「私は本当にこの仕事が好きなのかな?」「誰のために、何のために頑張っているんだろう?」と、自分の気持ちが分からなくなることがありました。燃え尽きたような気持ちになり、「辞めようかな」と思った瞬間も何度もありました。
崖っぷちに立たされたような気持ちになったとき、「自分がどう見られたいのか」「自分は何をしたいのか」と考えることすら、一度すべて手放してみようと思ったんです。まるで無人島のような場所に逃避した自分を想像して、すべてがゼロになった状態で「自分には何があるのか」と、改めて向き合ってみました。そこで、何も持っていない自分に何があるのかを考えてみると「人と話すことが好き」「作品を作ることが好き」ということが最初に浮かび、自分が本当に好きだったことが明確になったんです。
私は、これからも映画や雑誌を通じて、みんなと作品を作り続けていきたい。そう強く思うようになったのは、25~26歳になってからのことです。仕事を始めて10年近くかかりましたが、今では心から「この仕事を一生続けていきたい」と言えるようになりました。
書籍情報
中条あやみフォトエッセイ 『明日へのことば』
定価:1,980円(本体1,800円+税)
発売日::2025年2月4日
出版社:幻冬社
プロフィール
中条あやみ
1997年2月4日、大阪府生まれ。俳優として多くの映画ドラマに出演する一方、ファッションモデルとしても幅広く活躍。2017年、「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」にて日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その他出演作に「白衣の戦士!」「TOKYO MER~走る緊急救命室~」「あまろっく」など。2025年4月公開の映画「#真相をお話しします」にも出演。

























