松沢裕作『歴史学はこう考える』、「新書大賞2025」「東大年間新書ランキング」にランクイン

株式会社筑摩書房が2024年9月9日に刊行した松沢裕作『歴史学はこう考える』(ちくま新書)が、2月10日発表の「新書大賞2025」(主催・中央公論新社)の第3位に選ばれた。また本書は東大年間新書ランキングでも第1位を獲得するなど、話題を呼んでいる。
『歴史学はこう考える』は歴史家の松沢裕作(慶應義塾大学経済学部教授)が、自らの論文をはじめ、歴史家たちによる実際の論文を詳細に分析することで、「歴史学に共通するプロセス」を具体的に明らかにした異色作。
本書は歴史学の論文において、なぜある一文は現在形で書かれ、なぜまた別の一文は過去形で書かれているのかといった、歴史家たちの「言葉の使い方」に注目するという意表を突くアプローチを取っている。
かつてなかった視点から、歴史家たちが無意識に行っているがゆえに従来の歴史学入門書においては明らかにされることのなかった「歴史学の作法」の具体的な中身を読み解き、その言語化に成功していることが本書最大の特徴だ。
著者の松沢裕作は『日本近代村落の起源』などの専門書のみならず、『生きづらい明治社会』といった一般向けの歴史学書でも高い評価を受けている気鋭の歴史家。松沢自らも第一線の歴史研究者でありながら、この特異なアプローチによる入門書を執筆したことで、歴史学者のみならず、哲学者・社会学者など他分野の識者からも本書は「奇書」であるとして大きな反響を巻き起こした。
刊行直後からSNS上に識者たちからの絶賛の感想が溢れ、すぐさま一般読者へも本書の評価が波及していったことを受けて、発売3日で1万部の重版が決定するなど、セールスの上でもヒット作となっている(累計5刷3万8千部)。
とりわけ大学生・大学院生からは早くも必読書として捉えられているようで、2024年9月の刊行にもかかわらず、東京大学生協本郷書籍部では2024年の年間新書ランキング第1位を獲得した(東京大学生協本郷書籍部調べ、2024年1月1日~同年12月31日までの集計)。
■著者より
「あなたがどのような思想をいだいているにしても、ある論文が、マルクス主義者の書いたものだから、天皇制擁護論者が書いたものだから、フェミニストの書いたものだから等々、その他その歴史家が何か「偏った」考え方をしているから、その論文はそれだけで読むに値しないものである、などということはないのです。一応それなりに史料を読んだ結果として生まれた研究をまえにしたとき、読み手は、マルクス主義者がまじめに史料を読めば、天皇制擁護論者がまじめに史料を読めば、フェミニストがまじめに史料を読めば、……このような歴史が書かれるのだ、という読み方をすることが可能です。(…)
そして、ひとが言葉を用いて何かを述べているとき、その言葉によって語り手・書き手は何をしているのかに注意を向け、必要であればその根拠を問うということの重要性は、歴史や歴史学者に限ったことではないはずです。言葉に対して、そうした慎重な姿勢を欠いたまま、ただ受け取った言葉に納得したり、それを否定したり、感動したりしているだけでは、時に深刻な言葉のすれ違いが起きるでしょうし、あるいは言葉に踊らされることにもなるでしょう。私は、この本が、私たちが生きていくうえで、「まともに言葉を交わしあう」ための基盤を形成することに、いささかなりとも寄与することができれば、と願っています」(270-272頁)
■著者略歴
松沢裕作(まつざわ・ゆうさく)
1976 年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退.博士(文学)。東京大学史料編纂所助手・助教、専修大学経済学部准教授をへて、慶應義塾大学経済学部教授。専門は日本近代史、史学史。著書に『明治地方自治体制の起源』(東京大学出版会)、『重野安繹と久米邦武』(山川出版社)、『自由民権運動』(岩波新書)、『日本近代村落の起源』(岩波書店)、『日本近・現代史研究入門』(岩波書店、共編)などがある。
■書誌情報
松沢裕作『歴史学はこう考える』(ちくま新書)
刊行日:2024年9月9日
定価:1,034 円(10%税込)
頁数:288 頁
累計発行部数:38,000 部(5 刷)






















