『虎に翼』轟を好演・戸塚純貴「文通するように回を重ねた」くどうれいんとの共著『登場人物未満』創作秘話

俳優 戸塚純貴『登場人物未満』インタビュー

――Vol.9でフレンチトーストについて書かれたアンサーは、郷愁を誘うような、過去をまるごと愛するような味わいがあって、めちゃくちゃ好きでしたけど。

戸塚:商店街にあるパン屋さんの前で撮影したんですけど、そのめちゃくちゃ近くに住んでいたんですよ。だから当然、そのパン屋さんも行ったことがあって……。早朝に、いきなり「ここで撮らせてもらっていいですか」とお願いして、の写真だからちょっと寝ぼけたような表情をしている気もするけど(笑)、アンサーは、自分でもけっこういい文章を書けた気がします。文字数がやたらと多くなってしまって、レイアウトでご迷惑をおかけしましたけど、全部載せられてよかった。

――戸塚さんの文章って、セリフを言う人の文章ですよね。句読点の位置が、文章的な正しさではなく、呼吸の場所という感じがします。

戸塚:それは、あると思います。ふだんは感情をセリフに載せて口に出すことが多いから、文字だけで表現したときに、どうしても伝わらないものが生まれてしまうのが、もどかしくて。ふだんの僕たちがどれほど、声のトーンや言い方のニュアンスに助けられているのか、実感しました。句読点の位置は、なんとか伝わってくれ、冷たく響いてくれるなという僕の願いでもあると思います。

――Vol.1の文章からして、すごくよかったので、ふだんから書くことがお好きなのかなと思ったのですが。

戸塚:めっそうもない! 基本的にはいつも、四苦八苦。めちゃくちゃ時間もかかっていました。とりえあえず書きあげてはみたものの「これじゃない」「おもんない」ってボツにするしかなくて、〆切が近づいているのがわかっていても、なかなか送れないなんてことばっかりです。でもふと、コンディションがうまいぐあいにハマるというか、するするっと筆が進む瞬間がやってくるんですよ。その時を待つしかないのもまたもどかしかったんですが……文章を書く方たちの生みの苦しみって、こういうことなのかなあ、なんて思ったりもしました。おこがましいですけどね(笑)。

――とくに苦労した文章はありますか?

戸塚:Vol.14は、芸能の仕事をしている男とマネージャーの話で、あまりに自分と近い題材だったから、なかなか上手に書けなかったです。最初に書いたものは、生々し過ぎてボツにしました。最終的に掲載されているものも含め、実際のマネージャーについて書いたわけではなかったんだけど、地元の記憶以上に、邪魔してくるものがあって……。ソリッドになりすぎちゃったのかな。あと、Vol.12の文章も、いまだに不安。

――ラジオパーソナリティの男が、おたよりを読み上げなら終始一人語りする小説で、戸塚さんのアンサーも同じ形式がとられていました。

戸塚:僕、ラジオって毒を吐くものだと思っていて。くどうさんが書いてくれた小説では、あたたかみのあるパーソナリティとして描かれていたけど、ブラックユーモアのある彼のB面を表現してみたいなと。あえて逆のキャラクターをつくりたい、とチャレンジしたからこそ、ちょっと不安。

――両面あることで、実在するパーソナリティのようなリアリティが生まれたと思います。

戸塚:だったらよかったです。さっきも言ったとおり、同郷ならではのシンパシーをくどうさんには感じていたんだけれども、だからこそお互いのパーソナルな違いが見えてくることもあって。そのズレを楽しんでいるところもありました。

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