『ドラえもん』大山のぶ代さんの声が心に染みる……もう一度聴きたい“名ゼリフ”を考える

大山のぶ代さんの声で聴きたい『ドラえもん』の名台詞

 漫画版でののび太の返しのセリフは「そういう考え方もあるか。」だが、初代のアニメ版では「そうか、自分より大きなものがいないんだね」となっている。漫画版でののび太は単純に「大人に対する考え方」に反応しているだけなのだが、アニメ版ではドラえもんの見解を噛み砕いて、大人という存在を理解しようとするセリフに変わっているのだ。

 原作では、藤子・F・不二雄作品ならではのシュールさで、ドラえもんがのび太に人生の教訓を説明する構成となっているこのシーン。アニメ版では、のび太の生涯や、その子孫にあたるセワシたちの未来の暮らしぶりを知っているドラえもんが、やがて成長し大人になるのび太へ向けて「大人とは?」を伝えている、と考えるとかなりエモいセリフに聞こえてくる。

 ちなみに、この「大人ってかわいそうだね」のセリフは2代目ドラえもんである水田わさびバージョンも存在する。前後のストーリーや、のび太の掛け合いのセリフなども異なるので(水田ドラえもんのセリフの方が原作漫画に近い)、ぜひ大山ドラえもんと水田ドラえもんの声やセリフを聴き比べてみてほしい。

 『ドラえもん』には、何気ない言葉でも印象に残るセリフが多い。それはのび太を見守り、時には友だちとして泣き笑いを共にし、時には母親のように叱ることもある彼のキャラクター性と共に、包容力があり個性的だった一代目の大山のぶ代さんの声の説得力あってのことだろう。

 1981年公開の映画「帰ってきたドラえもん」で、21世紀に帰還後残してきたのび太が心配かドラミに聞かれたドラえもんが「大丈夫だよのび太くんは」と言うのだが、そんなふうに言ってくれるドラえもんみたいな存在がいたらいいなあ、と思ったのは、私だけではないはずだ。

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