【漫画】服装がおかしいバイト先のイケメンが教えてくれた、大切なこと……SNSで注目『着たい服がある』が熱い

【漫画】バイト先のイケメンの服装がおかしい

――本作をポストしたのはなぜだったのですか?

常喜寝太郎(以下、常喜):3、4回目の再掲ですが、新連載が始まるタイミングだったので宣伝を兼ねて投稿したんです。Xへの投稿頻度を上げていく第一歩としてのポストという意味もありましたね。

 最初に投稿した時は7万いいねくらい集まったのですが、何度投稿してもこれだけ反響があるのはありがたいです。

――5年前の作品となりますが、着想について改めて教えてください。

常喜:もともと自分が雑誌『men's egg』の撮影会に参加するほどのギャル男でした。でも地元・滋賀には金髪にしたり、日サロに行ったりするファッションの人がいなくて浮くんです。まだ大阪だといるんですけど。それで自分自身が「着たい服を着よう」というマインドではあったんです。

 あとは読み切りデビュー作が、20万円のクロムハーツの財布を買うだけの『ファッションモンスター』という漫画だったんです。その作品に出てくるのが「買いたい時に買うのが一億倍気持ちいいんだよね」というセリフ。それが先ほどのギャル男時代の話と混ざって「着たい時に着たい服を買うのが一億倍気持ちいいんだよね」というフレーズが生まれました。

 それをモチーフにした『着たい服がある』のプロトタイプとなる短編をTwitterに投稿したら、そのシリーズの評判がよかったんですよ。それで改めて連載作品として描くことになった形です。

――最近ロリータファッションを題材にしたSNS漫画が増えている印象ですが、常喜さんが取り上げたのはなぜ?

常喜:ファッションに対する先入観が強いので、その決めつけに抗うという漫画のモチーフにしやすいのかもしれません。でも僕の場合は本当に思い付きでした。描き始めた時はロリータについての知識はゼロでしたから。

 そして『着たい服がある』はロリータにフォーカスした作品ではありません。テーマは「好きなファッションを追求しつつ、同時に自分らしさを貫く」。もともと僕がいじめられっ子で、突然ヤンチャっぽい服を着始めた経験があるんです。要するに威嚇であり、まるで服が鎧のような感じ。道着に袖を通すと気合が入る感覚に近いですね。

 ただ逆にいえば「服がないと強くなれない」ということでもあります。だから物語は「鎧を脱いでも、ロリータファッションを着た時の強さが内側にある」という状態を主人公が見出していく展開にしました。

――なるほど。

常喜:作品がSNSでバズってからは勉強のために雑誌『KERA』を読み始めたんですよ。そうしたら巻末にあるQ&Aのコーナーに「学校で着るのは怖いから都内に行く時だけ着ようと思っています。皆さんはどこで着替えられていますか?」など、他のファッション誌では見られない質問がたくさんあって。

 その後ヤフー知恵袋などでも検索して、色々な悩みを持つ人がいるんだなと。ギャル男から個性的なファッションに移った自分も周りに理解されず悩んだので、とても共感できました。そういった声も漫画に落とし込んでいます。

――また現在連載されている『全部救ってやる』は動物愛護をテーマに描かれています。これについても教えてください。

常喜:僕が高校生の時、知人の保護活動者が保健所の話をしていたんです。僕は猫を飼っていたので、動物の裏側を知りたい気持ちはありましたが「殺処分」のイメージが怖くて見ることを避けてきました。でも大人になった今、僕と同じ気持ちの人が多いことを知り、勇気を出して描いてみようと思ったんですね。結果、動物たちのことを知ってもらって少しでも救われる命が増えれば……と。

 本作を描く上で気を付けているのは「特定の職業や活動者の方の印象が悪くならないようにすること」。例えばペットショップに悪い印象を持つ方が多いのですが、その意見も尊重しつつ、現場で働いてる人がどんな想いで動物と携わってるのかもきっちり描くことを心がけています。事実を伝えて、偏った印象操作にならない内容にしたいんですよ。だから今作は取材を増やすなど力を入れています。

――他にコンセプトやテーマは?

常喜:「自分のために生きよう」という発信は素敵ですが、本作の主題は「誰かのために生きる」です。誰かのために生きると一見、自分が損をしたように感じますが、自分が困った時は心から助けてくれる人が集まってくる。

 だから孤独から救われるのは「誰かのために生きる」方なのかなと。僕自身が自分の夢のために生きてきたからこそ、今回のテーマに興味を持ち、深掘りしながら今までの自分になかった考えに気付いていきたいですね。

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